CDブックレットも必見

マドンナ『マダムX』
発売中
ALBUM
マドンナ マダムX

《ゲイが焼かれるなら私はゲイになろう/貧しい者が侮辱されるなら私は貧しい者になろう/イスラムが嫌われるのなら私はイスラムになろう》(“キラーズ・フー・アー・パーティーイング”)

これがマドンナである。自分は常に弱者、マイノリティ、異端、そして虐げられた者の側に立つ。そして《私たちは立ち上がる/私たちならできる》(“アイ・ライズ”)と宣するのだ。デビューしてから36年、ブレない彼女の姿勢である。

2年前からリスボンに移住、新作のレコーディングもリスボンで開始され、その後ロンドン、NY、LAでの作業を経て完成した。プロデュースは過去3枚のアルバムを手がけたミルウェイズのほか、マイク・ディーン、ディプロなど。ゲストはスウェイ・リーやクエイヴォといった米南部のラッパーのほか、マルーマ、アニッタといった中南米〜ラテン系のボーカリストの参加が目を惹く。

マドンナはリスボンで“リヴィング・ルーム・セッション”(個人宅で開かれるパーティー形式のミニ・ライブ)に何度も足を運び、そこで聴いた音楽にインスピレーションを受けた。ファドを始めとするポルトガルの伝統音楽やポップ・ミュージックだ。そこで感じた独自のメランコリーに触発された彼女は、それをアメリカのR&Bやヒップホップに接続し、さらには中南米や中近東、アフリカなどの音楽の要素を加え、いわば英語圏のポップ・ミュージックと非英語圏のそれを融合し、彼女なりに“ワールド・ミュージック”を再定義して見せた。

実際、ここにはヒップホップも、R&Bも、ファドも、レゲトンも、アフロビートも、ダンスホールも、サンバもある。マドンナの皮膚感覚の鋭さ、折衷能力の高さがうかがえる。新しい音楽、未知の文化を取り入れることに躊躇しないのは、歌唱力や楽曲の力のみに頼らず、サウンド、ダンス、ビジュアル、ファッション、生き様や思想も含め、あらゆるエレメンツを総動員して「マドンナ」という名の総合エンタテインメントを演出するプロデューサーとしての所作もあるだろう。

もはやマドンナの目は西欧のみに向いていない。特定の地域や民族に固執することもない。それは彼女の「地球市民」としての自覚と使命感と共に、連帯の、そしてマーケットの対象として英米以外のヨーロッパやアフリカ、中南米を重視しているということでもあるだろう。

もはや彼女は月並みな西欧中心の世界観では測れないような存在となりつつある。そう思わされる、還暦になったマドンナの力作。 (小野島大)



各視聴リンクはこちら

ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

マドンナ マダムX - 『rockin'on』 2019年8月号『rockin'on』 2019年8月号
公式SNSアカウントをフォローする

洋楽 人気記事

最新ブログ

フォローする