磨かれるノエル流サイケ

ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ『ディス・イズ・ザ・プレイス EP』
発売中
EP
ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ ディス・イズ・ザ・プレイス EP

頭からはじけまくるベースライン、アシッド・ハウスやノエル曰く“マンチェスター・サウンド”の雰囲気濃厚なグルーヴに、「コレだよ」と歓喜する人の顔が見えるようだが、ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズの『ブラック・スター・ダンシング』に続くEPシリーズ第2弾『ディス・イズ・ザ・プレイス』、3曲5トラック入り、配信&アナログ限定盤の登場だ。そのタイトル曲の前半、ドラッギーなノリから後半に向かいサイケ・ワールドが広がる展開の自信に満ちたたたずまいが、ノエルの快調さを物語る。

酒場の盛り上がりをコミカルに巧く使ったMVが最高だった“ブラック・スター・ダンシング”に比べると、今回はストレートなバンド・モードのMVで、そこらはライブの充実ぶりとも反応し合っているのだろう。そんな“ディス・イズ・ザ・プレイス”に続く“ア・ドリーム・イズ・オール・アイ・ニード・トゥ・ゲット・バイ”が極めつきの美しいバラードで、ドリーミーかつファンタジックなメロディ、コード進行、サビのさりげないアクセントの付け方が、さすが名ソングライター、ノエルならではであり、とても魅力的だ。これを聴いていると『フー・ビルト・ザ・ムーン?』に続くアルバムのアプローチも何となく感じられたりもするし(期待も込めて)、深い余韻を残す長めのアウトロ、この曲にはリミックスは無用、との気持ちもわかる気がする。

そして3曲目は一転してファンキーな要素も交えたバンドが一体感を強調して突進する、今のノエルがもっとも得意とするサウンドの“イーヴィル・フラワー”で、これはライブ映えするナンバー。

そしてグリンプスとアレックス・ジョーンズによるシークレット・ユニット、デンス&ピカがリミックスを手がけた“ディス・イズ・ザ・プレイス”は期待通り、ぶっとくマッド感たっぷりなビート・トラックに仕上げられているし、人気プロデューサー:ザ・リフレックスの手になる“イーヴィル・フラワー”では、ダブ的な冷やりとした快感に包み込まれる。

改めて振り返ると、プロデューサー的なセンスを磨き上げて完璧な音を聴かせた『フー・ビルト・ザ・ムーン?』が出たのが17年末のこと。その後の日本も含んだツアーの連続、これからだってU2とのツアーがあったりと、ぎっしりのスケジュールの中で、新しい自分の方向を睨むEP連発はみごとで、年内、もう1枚予定されるEPにも期待は高まるばかりだし、その先にあるアルバムがだんだんと浮かび上がるかのような流れもノエルらしい。 (大鷹俊一)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。
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ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ ディス・イズ・ザ・プレイス EP - 『rockin'on』2019年10月号『rockin'on』2019年10月号
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