実験と発見、惹かれ合う万有引力

椎名林檎『ニュートンの林檎 ~初めてのベスト盤~』
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ALBUM
椎名林檎 ニュートンの林檎 ~初めてのベスト盤~
椎名林檎は長らくベスト盤を発表してこなかったが、デビューから21年で遂に、しかも『三毒史』から畳み掛けるようにして、CD2枚組、ボーナストラック含む30曲収録のベスト盤を発表する。東京事変の活動時期に絡む断続的なソロキャリアを俯瞰し、アルバム初出曲や新曲も収める作風はあらゆる世代のリスナーにとって嬉しい内容だし、長いキャリアを誇るアーティストがこのプレイリストの時代に作品を纏めておくことは意義深い。

20年前の『無罪モラトリアム』の時、彼女は既にセンセーショナルな存在となっていたが、デビュー曲“幸福論”からメディアに大々的にプッシュされていたかというと、そうではなかったと思う。あたかも、オルタナティブがメインストリームに成り代わる歴史を凝縮したかのように、当初はソロキャリアを歩んでいた。“カーネーション”か“NIPPON”か、いつしか彼女は国民的ポップスターとなっていたが、新曲“公然の秘密”から始まるディスク2の、多様なコラボレーションで社会をかき回してきた楽曲の連打は凄まじい。実験精神にこそ美を見出してきた活動の記録だ。(小池宏和)
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