急がずに、しなやかに、自分らしく

スティーヴ・レイシー『アポロ 21』
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ALBUM
スティーヴ・レイシー アポロ 21

現在21歳のスティーヴ・レイシーは、あらゆる点で「今」を体現するアーティストだ。ネオR&Bバンド、ジ・インターネットのギター担当として活躍を続ける一方、作曲/プロデューサーとしては対外試合にも積極的に参戦。ケンドリック・ラマーソランジュから、果てはヴァンパイア・ウィークエンドまで!というコラボ人脈の幅広さもすごいけど、そもそも音楽ゲーム「ギターヒーロー」がきっかけで楽器を始め、これまでほとんどの曲をiPhoneで作ってきたレイシーからすれば、ごくごく自然な成り行きなのだろう。カラフルなチェック柄シャツのように、いろんな色や太さのラインを縦横無尽に駆け巡らせていくこと――それが彼にとって音楽のあるべき姿なのだ。

本作は、そんなレイシーの初めてのソロ・アルバム。豪華ゲストを集めようと思えばいくらでも集められたはずだけど、そっち方面へは行かず、むしろ逆に、すべての曲を自宅の妹の部屋(大学へ進学中で、ちょうど空き部屋だったんだとか!)でレコーディングしたという辺りがいかにもレイシーらしい一作となっている。バンドとしての縛りがあるジ・インターネットの楽曲と比べると、より自由な発想のものがずらりと並んでいて、80年代プリンスを彷彿させる“プレイグラウンド”や“ガイド”みたいな極上ファンクがあるかと思えば、“ラブ・トゥー・ファスト”などはローファイ感が心地よいインディ・ロック風。自らがバイセクシャルだと公言しているレイシーがその体験を初めて正面から歌った“ライク・ミー”は9分超えの大作だし、インスト曲の“アマンドラ・インタールード”に至ってはなんとバイオリンがメイン楽器だ。フリー・マインドな自然体モードが生んだ全12曲。2019年の「しなやかさ」って、きっとこういうことだと思う。 (内瀬戸久司)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』12月号に掲載中です。
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スティーヴ・レイシー アポロ 21 - 『rockin'on』2019年12月号『rockin'on』2019年12月号
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