「オザケン」が帰ってきた
小沢健二『So kakkoii 宇宙』
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ALBUM
小沢健二の音楽が流れる時、いつでも街の風景はキラキラと輝いた。そしてそこには常に胸が高鳴るような愛と未来への希望があった。皮肉屋の一面もあるにはあったが、その音楽はどこまでもこの世界に対して肯定的な視線を投げかけてきた。そんな「オザケン」に僕は憧れ、ときめいてきた。この17年ぶりのオリジナルアルバムには、その時と同じ憧れとときめきがある。しかも完全に「今」の風景と気分にリンクする形で。まさに“彗星”で歌われる《1995年》の「長くって寒い」冬に“強い気持ち・強い愛”を歌ったのと同じように、「オザケン」は《シナモンの香りで/僕はスーパーヒーローに変身》(“シナモン(都市と家庭)”)して、僕らの生活を祝福するのだ。「復活」した当初からライブで披露されていた“いちごが染まる”では暗喩的だったテーマが、本作の最後に収められた“薫る(労働と学業)”で《どしゃぶりの雨がくれる 未来の虹/もう少しで 何が最高かは 変わるから》と確信とともに歌われる時、またしても街の風景は色彩を帯びて輝き出す。そう、未来はここから始まる。信じていいのだ。(小川智宏)