ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーが本名のダニエル・ロパティン名義でリリースする最新作。20年1月にNetfl ixで公開される映画『アンカット・ジェムズ』のサウンドトラックで、監督のジョシュア&ベニー・サフディ兄弟とは前回の『グッド・タイム』に続いて2度目のタッグになる。ロパティン自身の発言によれば、「OPN」としてのシグニチャーが優先された前作に対して、今作は「映画(のための)音楽」として徹した部分が大きかったとのこと。名義が異なる理由もそこにあるそうで、実際、今回は監督/映画自体のディレクションに基づき制作された様子が窺える。
そのことは、しかし今作が独立した音楽作品としても楽しめることとなんら相反しない。なるほど『グッド・タイム』と比べるとエディットやノイズ/ドローン的な先鋭性は後退し、サウンドスケープ的というか、より劇伴としての音作りに重きが置かれた印象は確か。ただし、サックスやフルートなどの管楽器や打楽器、人間の声をはじめ多彩な要素が盛り込まれており、ダニエル・ロパティンという音楽家がそもそも備えている映像喚起力の高さにあらためて感嘆させられる。制作にあたっては“ニュー・エイジのシンセ音楽”というアイデアが元々あったそうだが、もちろんOPNらしいアンビエントなエレクトロニクスのテクスチャーは健在。フェイバリットに挙げる芸能山城組にインスパイアされたと思しき、チャントとパーカッションが織りなす“ウィンドウズ”のシャーマニックなオペラも面白い。
ちなみに、ロパティンの発言によれば、映画本編に出演するザ・ウィークエンドと一緒に書いた曲もあったのだとか。もろもろ考慮して収録は見送られたそうだが、いつか公開の機会があるかもしれない。(天井潤之介)
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