もう一度、真の終章のために

ギャング・スター『ワン・オブ・ザ・ベスト・イエット』
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ALBUM
ギャング・スター ワン・オブ・ザ・ベスト・イエット

90年代の半ば頃、ギャング・スターのアルバムを聴くのは、最高にクールなことだった。1MC&1DJ(ラップ担当のグールーと、ターンテーブル担当のDJプレミア)の化学反応が本気でハマったとき――98 年の“モーメント・オブ・トゥルース”とか!――の彼らには、寒風が吹きすさぶ中でも背筋がシャキッと伸びるような「凛々しさ」があった。オールドスクールなヒップホップの神髄がギュギュッと詰まってて、そこが最高にかっこよかったのだ。

ギャング・スターは03年発表のアルバムを最後に解散し、ふたりは別々の道を歩んだ。そして2010年、グールーは心臓発作のために48歳という若さで死去。ギャング・スターの歴史は終わったと、誰もが思っていた……が、しかし! 本作はグールーが生前に遺していた未発表のラップに、DJプレミアが新たなビートを足すという形で完成した、16年ぶりのまさかの「新作アルバム」である。

亡くなったラッパーの未発表音源を元に作ったアルバムというと、どこかで必ず「やりすぎ感」が出て、やたらと湿っぽくなりがちなものだ。でも、本作は違う。今も現役バリバリで活動中のDJプレミアは、限りある素材にビート・サイエンティストの魔法で息を吹き込み、最高に凛々しいオマージュ・アルバムを作り上げた。QティップやM.O.P.やJ.コールなど、ゆかりあるラッパーたちが順に招かれ、それぞれのライムを捧げていく流れも素敵だ。みんな、グールーが大好きだったんだ。

DJプレミアいわく、ギャング・スター名義のアルバムは、これが正真正銘のラスト作だとのこと。悲しいけど、最後の別れにふさわしい、美しいエンディングだと思う。ありがとう、いつまでも忘れないよ、ギャング・スター。(内瀬戸久司)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。
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ギャング・スター ワン・オブ・ザ・ベスト・イエット - 『rockin'on』2020年1月号『rockin'on』2020年1月号
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