2019年に行われたドームツアーのファイナルとなった、5月26日のナゴヤドーム公演の模様を収めた映像作品。Mr.Childrenの映像作品は、いつもライブの全体像やバンドを追いかけた様子だけではなく、ここぞという表情や場面が丁寧に収められているが、その魅力はドームという巨大な会場が舞台の今作においても同様だ。しかも、バンドという原点に立ち返ったような最新作『重力と呼吸』を軸に構成されていることもあって、人間らしさがよりフィーチャーされているような印象を受けた。オーディエンスと対話したいという意思を感じるMCや、桜井がギターのネックをひと振りして曲が終わる瞬間、サポートの世武裕子のピアノとJENのドラムとのバトルのような演奏など、「鑑賞する」には留まらないロックバンドのライブの躍動感が、今作には見事にパッケージされている。ヒット曲を自覚してセットリストに組み込むエンターテインメント性はありながら、虚像ではない――2曲目から汗だくで駆け回り、後方の観客に気持ちが「わかるよ！」と呼びかける、「人間・ミスチル」が、ここにいる。（高橋美穂）