サザン・ガレージの妙

ザ・フィルムス『オー、スコピオ』
2009年04月02日発売
ALBUM
ザ・フィルムス オー、スコピオ
サウス・カロライナ出身の4人組、ザ・フィルムスの、2作目となるアルバム。サザン・ロックやカントリーをガレージなサウンドでざっくりと料理してしまうバンドである。00年代のガレージ・ロック・ブームには英国でもフォーキーなソングライティングを聴かせるミスジェやラリキン・ラヴ(惜解散)などのバンドがいたが、フィルムスはそのUS版と捉えれば良いだろうか。ユニークなメロディと広がりのあるコーラスが絡み、しかし大陸的な大らかさとは無縁で性急さも持ち合わせているのが、妙にアンバランスで面白い。
ザクザクと米国風ソングライティングの深みに切り込んでゆく姿は実にフレッシュだし、若いロック・リスナーの感性にもフィットする演奏だと思う。でも、メロディの源泉が南部音楽のゆったりと進む時間軸の中にあるため、どうしても荒いガレージなテイストだと無理が生じてしまうようにも思う。サザン・ロックの成熟を追体験したオッサンだからそう感じてしまうのかな。そう考えると、プロデュースを務めたブッチ・ウォーカーが楽曲のキャッチーさと性急な演奏を両立させたのは、さすがの英断。(小池宏和)
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