生粋のインターナショナル

エイジアン・ダブ・ファウンデイション『アクセス・ディナイド』
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ALBUM
エイジアン・ダブ・ファウンデイション アクセス・ディナイド

90年代後半にイギリスで盛り上がったアジアン・アンダーグラウンド(ここでの「アジア」は主にインド亜大陸出身の英移民を指す)の旗手として脚光を浴び、社会派なメッセージとジャングル/ヒップホップ/パンク/ダブ/バングラをフュージョンした活力あふれるダンス・サウンドを展開してきたADF。分類のしにくさとラディカリズムがある意味仇となって(?)海外ではレーベルを転々としメンバーも変化してきたが、2013年以来となる新作は結成から四半世紀以上経ってもなお彼らの信念と誠実が揺るがないのを再確認させてくれる力作だ。

ADF節が暴れまくる冒頭3曲は古株ファンを安心させる盤石さで痛快。しかし聴き所はそこから先に広がるパンキー・レゲエ、ジャズやサントラに想を得たインスト曲、「スリーフォード・モッズ×ADF」とでも言うべきダークな風刺、パレスチナやチリのアーティストとのコラボが生む新鮮なビートといった多彩さと創意だ――耳に面白くなければ音楽は拡散しないことを彼らは知っているし、環境活動家グレタ・トゥーンベリのスピーチを用いた⑪も、初期に15歳のラッパーをフロントに据え若者の声も反映させていた(老いも若きも交じる)コミュニティ発の音楽集団である彼ららしい。「進入禁止」のタイトルは本作のエモーショナルな起爆剤と言えるブレグジットおよび2016年以来再び強まっているイギリスのナショナリズムや移民批判・多文化否定を象徴している。それより話題はコロナかもしれないが、コロナ禍によって低所得者層や医療機関/ケア・ワークで働く移民が打撃を受けている不平等と格差が目に見える形になった今こそ、ADFが社会に向けて発し続けてきた平等・団結・共闘の呼びかけは逆に痛切に響く。 (坂本麻里子)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。
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エイジアン・ダブ・ファウンデイション アクセス・ディナイド - 『rockin'on』2020年7月号『rockin'on』2020年7月号
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