合体を超えた刺激的融和――怪物バンドの、成熟の証

メタリカ&サンフランシスコ交響楽団『S&M 2』
発売中
ALBUM
メタリカ&サンフランシスコ交響楽団 S&M 2

昨年9月に実施された、メタリカとサンフランシスコ交響楽団による共演ライブの模様が密封された作品。その映像は公演の1ヶ月後には世界各国の映画館で限定公開されていたが、今回は2枚組CDと映像作品のセットのみならず、それぞれ単体でも発売となる。彼らは1999年にも同楽団とステージを共にしており、その際の模様も『S&M~シンフォニー&メタリカ』として作品化されているが、本公演はその20周年を記念して実施されたものでもある。

そうした意味からも、どうしても20年前との比較論的な見方にならざるを得ないところがあるが、明らかな違いはバンドとオーケストラの双方の、音楽的な踏み込み方の度合いにあると言っていいだろう。かのマイケル・ケイメン(2003年に他界)からの直々の提案により、彼自身の指揮の下で繰り広げられた前回の演奏は、画期的ではあったがあくまで足し算の領域で終わるものだったように思う。それに対し今回は、単なる合体にとどまらない有機的な掛け算になっているのだ。プロコフィエフの“スキタイ組曲”をはじめとするクラシック曲が中盤に挿入されている事実、また、楽団のベース奏者をフィーチャーするかたちで故クリフ・バートンに敬意を捧げながら披露された“(アネシージア)―プリング・ティース”などはまさしくそれを象徴しているし、お馴染みの曲たちの“化け具合”も当時とは違う。同時に、個人技の水準の高さを取り沙汰されることがあまり多くないメタリカが、すぐれた演奏家の集合体であることも改めて実感させられる。

それは当然ながらジェイムズ・ヘットフィールドのボーカルについても同じことで、本作での円熟味ある歌唱を基準とするならば、20年前の彼はまだ模索の過程にあったということになるだろう。彼がギターを抱えず情感たっぷりに歌う“ジ・アンフォーギヴンIII”から感じられる自然体な貫禄には、かつての彼が求めていたはずの説得力がある。

加えて、20年前の『S&M』は、メタリカ自身の音楽的方向性に揺らぎが見えた時代の作品でもあったわけだが(前任ベーシスト、ジェイソン・ニューステッド在籍期の最終作でもある)、現在の彼らはそうした時期の楽曲についてもよりナチュラルに着こなせているし、本作を通じて近年の楽曲の充実ぶりを再認識させられる部分もある。ロック・バンドとオーケストラの共演は、ロック史においてことさらめずらしいものではない。そして、いまさら“背伸びした挑戦”に挑む必要のない彼らにとって、それはいわば巨大な身の丈に合った実験なのである。 (増田勇一)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。
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メタリカ&サンフランシスコ交響楽団 S&M 2 - 『rockin'on』2020年9月号『rockin'on』2020年9月号
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