貫禄を感じる最強のロックアルバム
ワイルドなリフが轟く“Bygone”の重厚なロックアンサンブル。《I’m a son of rage from the bygone days/Willing to endure with a finger on the trigger/I am always loaded like a shielded chamber》。怒りをコントロールしながら《I’m gonna find the calm of mind》と歌うこの曲に代表されるように、とても骨太で、芯そのものが描かれたようなメッセージと音像は、強い包容力がある。巨大なサウンドスケープの中、胸がすくような爽快な展開を見せる“Fall Out”。スコットの泣きのメロディが貫かれる“Iridescent Light”では、《And we’ll forge on/Through the harshest winters yet/Wake from our old lives/In iridescent light》と、困難の中、強い連帯でもって、新しい世界に飛び込もうという境地が歌われる。そして、今作に“Interstate 46”が入ると、さらに分厚くセンチメンタルとカタルシスが放たれる。
始動から約5年。ものすごくいいバンドであることは前提として、ものすごくタフなバンドとなったMONOEYESによる貫禄且つ最強のロックアルバムだ。(小松香里)
答えなき時代の魂を突き動かすもの
あたかも生命の賛歌の如く晴れやかに鳴り渡る音像とともに《僕らが過ごした/当たり前の日々も/遠くなるけど/きっと/蜃気楼みたいに/朝焼けに染まって/笑ってるのさ》と突き上げる最終曲“彼は誰の夢”を聴いて、抑え難く胸が震えた。前作『Dim The Lights』でロックの衝動と反骨心とイマジネーションを高次元で研ぎ澄ませてみせたMONOEYESの音楽が、約3年ぶり3rdアルバムとなる今作を通して、聴く者一人ひとりの魂に揺るぎなくギアを合わせるような強度をもって「困難のその先」への加速感と推進力を体現し提示している――。その事実が、何より嬉しく心強かったのだ。沖縄レコーディング予定のキャンセル、相次ぐライブスケジュールの中止・延期など、バンド自身もコロナ禍の影響を大きく受けながらも、細美武士の視線は暗闇の中で歩を進める「君」の足取りへとまっすぐ注がれているし、誰のもとにも降りかかる厭世観を目映い旋律で一掃しながら《You are my greatest hero of all time》(“Outer Rim”)と歌いかける細美の熱唱は、答えなき時代を前へ先へと突き動かすロックの核心そのものとして響いてくる。(高橋智樹)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2020年11月号より)
現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』2020年11月号にMONOEYESが登場!
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