今年結成50周年を迎えたEW&Fが、1974年から1990年までに日本でリリースした全シングル曲とミュージック・ビデオを収録した2CD+DVDのセット。打ち込みのビートを導入する以前、1973年からの10年間こそ、EW&Fの黄金期だと信じる自分には、嬉しいコレクションである。
この時期の彼らが創り上げたのは、暗黒の世界に光を当てるべく、ファンク、ジャズ、ロック、ワールド・ミュージックなど、様々な要素を融合させたソウル・ミュージックだ。早逝した天才編曲家、チャールズ・ステップニーの芸術的なアレンジが炸裂する1976年までの作品は、輝きに目が眩むほどの創造性に満ちている。その後の“セプテンバー”をはじめとするポップでキャッチーなディスコ・ヒットは、まさにマスターピース。当時の日本盤シングル・ジャケットを網羅したブックレットも楽しい。
この『ジャパニーズ・シングル・コレクション』シリーズは、これまでにシンディ・ローパー、ポール・ヤング、ボズ・スキャッグス、チープ・トリックなどをリリースし、レアなシングル・バージョンを多く収録した素晴らしい企画だが、今回のボーナス・トラックには驚いた。1977年の『太陽神』に収録された“ブラジルの余韻”のエクステンデッド・バージョンだ。もちろん日本初CD化。
トニーニョ・オルタが書き、ミルトン・ナシメントも歌ったブラジルの楽曲を元にした、1分20秒の美しくグルーヴィーな間奏曲で、多くの人が「もっと長く聴きたい…」と願ってきた名曲に、4分32秒にわたる幻のフル・バージョンが存在したのだ。後半で聴き慣れたスキャットが現れた瞬間、思わず感動で泣きそうになる、長年のファンにとって最高の贈り物。 (片寄明人)
詳細はSony Music Entertainmentの公式サイトよりご確認ください。
ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。
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