さユり自身も「危険だと分かりながらも欲に溺れてく、そんな人の心についての曲」とコメントを寄せている通り、ドラマ『東京怪奇酒』のオープニングテーマとしてもオンエア中のデジタルシングル“かみさま”は、我が身を焦がすほどの激情をかつてないほどダイレクトに焼き込んだ1曲だ。想いが募るほどに平静とバランスを失う心を、危ういほど精緻に活写した詞世界。感情の異世界へと飛び出していくスリルそのものをメロディに置き換えたような、楽曲自体のエモーショナルなダイナミズム。聴く者すべての心の琴線をかき乱すような、どこまでもアグレッシブなバンドサウンド――。それらの要素が一丸となって、酸欠少女さユりの「今」の切実なモードをまっすぐに指し示している。
当初から突き詰めてきた「現実への葛藤」「生命への希求」といったテーマを、“ねじこ”“葵橋”“summer bug”で日常のリアルに重ね合わせてきた2020年のさユり。今回“かみさま”で一転、概念ではなく一人称の想いの発露として愛を掲げる絶唱は、さユりの新たな季節の到来を如実に物語るものだ。（高橋智樹）
