60年代後半から始まった快進撃でアトランティックR&Bの全盛期を支えた「クイーン・オブ・ソウル」ことアレサ・フランクリンだが、伝道師の娘だった彼女のルーツはゴスペルにあり。ロサンゼルスの教会で地元聖歌団と共におこなったコンサートから制作された原盤は72年の発売当時ゴスペル・レコードにしては異例の大ヒットを記録した。
その完全版である本作はコンサートを丸ごと疑似体験できる臨場感あふれる作りで、イントロのオルガン演奏を聴いているとこれは神と彼女のスピリチュアルな結婚式ではないか?と錯覚を起こす――それくらい、ハリとツヤに満ちた歌声にはピュアな歓喜と全身全霊の深いエモーションとが刻印されている。
「聖歌」の二文字だけで尻込みする方もいるかもしれないが、天才の発現は聖も俗も超越した説得力であなたの心を鷲掴みにするはずだ。(坂本麻里子)
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