すべての眠れない夜に向けて

あいみょん『ハート』
発売中
SINGLE
あいみょん ハート
まず表題曲“ハート”。ぽつねんとしたトーンを保ちつつ、主人公が置かれた状況とその奥に蠢く感情を、秘密は秘密のまま伝える繊細な筆致が見事。《ひとつになる度、期待すること/近くにいればいつかは待ってる?/柔い時間》――どれだけ「ひとつ」になってもひとつになりきれない人と人がいる。そこに生まれる刺々しくも愛らしく、弱々しくもエゴイスティックな心の形が、大げさにならないストリングの上品なアレンジも相まって、柔らかく魅惑的に造形された1曲だ。また、関口シンゴがサウンドプロデュースを務めるカップリング“森のくまさん”は、煌びやかなイントロから一転、《初めてそうなった時の事を/思い出して死にそうになってる》という歌い出しが聴こえてくれば、一気に愛と血と毒に満ちたあいみょんワールドに引き込まれる。

よくよく考えれば2曲とも「生き地獄」みたいな状態を歌っている気がしないでもないが、地獄に落ちる覚悟がなければ恋なんてできないし、やはりあいみょんが肯定するのは、皆が寝静まった夜中に、目を血走らせながら孤独に愛の受難を疾走する人の姿なのだ。(天野史彬)

公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする