幻惑的、かつ洒落ていてリアル

クリープハイプ『夜にしがみついて、朝で溶かして』
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ALBUM
クリープハイプ 夜にしがみついて、朝で溶かして
人の悲しさが踊っている。「悲しいから踊る」という逆説的な物言いではなく、「悲しさ」それ自体が踊っている。音と言葉が跳躍し、抱き合ったり反発したりしながら、「どうしようもねえなあ」とケラケラ笑っている。その笑い声がリズムになっている。こんなにも緻密で優しく、人の「どうしようもなさ」を肯定する音楽が生まれたことが嬉しい。このアルバムを聴いていると、私はとてつもなく喜びを感じる。「喜び」なんてこのバンドには似つかわしくないのかもしれないが、しかし、このアルバムは創作と表現の喜びに満ちている。それも、観念的に手に入れたものじゃない。歌と言葉を問い、“愛す”や『母影』を生んだ実験の季節を経て身体で手に入れた喜びである。たとえば、“二人の間”や“なんか出てきちゃってる”に感じる「間(ま)」の美学。わかり合えないからわからせるために叫ぶのではなく、「在る」状態それ自体に魅惑的な美しさやおかしみが生まれている。1曲目は“料理”で、最後は“こんなに悲しいのに腹が鳴る”。「食」というモチーフで挟んだところに、根源的な生活への飢えと生命力を感じる。(天野史彬)

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