誠実な歌者の過去、今、未来

山内総一郎『歌者 -utamono-』
発売中
ALBUM
山内総一郎 歌者 -utamono-
フジファブリック山内総一郎による1stアルバム。なぜソロアルバムなのか、という疑問について、タイトルで正面から答えている。さらに、今作は歌で勝負するという宣言のように、歌詞なき歌声で始まる“Introduction”から、『歌者 -utamono-』と名乗るには、まず盟友に向けて歌うとばかりに《「ギターを弾いて欲しいんです」迎えてくれた言葉 今でも澄ましては胸を暖めています》と綴った“白”という冒頭の2曲に、大きな決意を感じる。その後も、10曲すべてが(6曲目の“Interlude”も含めて)徹頭徹尾歌モノ。フジファブリックの武器である気持ちいいグルーヴや捻くれたアレンジを封印しているのかと思うほど、歌そのものが響いてくるのだ。その誠実さにも、彼のパーソナリティが表れており、ソロらしいソロだと思える。“風を切る”など、贅沢なほど一曲一曲が粒立っていて、この才能が形になってよかったな……と噛みしめずにはいられない。ただ正直、彼がこんな作品を生み出すとは、10年前は考えられなかった。時の流れと、彼の成長、そして、それでも変わらない想いも、今作には刻まれている。(高橋美穂)

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