見つめるものに、見つめられている

Vaundy『走馬灯』
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Vaundy 走馬灯
“恋風邪にのせて”以来4ヶ月ぶりの自身名義の新曲。“恋風邪にのせて”がゴージャスなポップスであったのに対し、この“走馬灯”は有機的な楽器のアンサンブルが映える90年代オルタナティブロック的なサウンドの楽曲だ。

沸々と揺れ動く序盤から、堰を切ったように音が溢れ出すダイナミックなサビへ、海や雨のように饒舌な曲自体のスケールは大きいが、歌詞に込められた眼差しは小さく孤独だ。目の前から消えていったもの、手のひらから零れ落ちたものへの想いが訥々と綴られた言葉と、それを独白のように歌う歌唱が、曲に一抹の静けさと温かみをもたらしている。

YouTubeのMVの概要欄には「見つめるのが自分の瞳でも、よいではないか。」とある。己の瞳を見つめ、そこに映るものに見つめられながら作った曲なのだろう。《晒し合いまた痛む/愛を許してくれ》――この曲はそんなフレーズで幕を閉じる。愛すること。その痛みを知りつつ、どうしようもなく愛してしまう。愛さずにいられない。そんなドン・キホーテの横顔に、彼が「ポップ」という受難の道を歩く理由を見る。(天野史彬)

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