バンドの肉体性とダンスミュージックの肉体性を掛け合わせることで人間の本能を呼び覚ます表現を追求してきたLucky Kilimanjaroが、4枚目のアルバムで向き合ったテーマは「変化を乗りこなす」。個人が時間の流れの中で抗えない変化や、2020年代における世界全体の激しい変化などと、どのように向き合っていくかという問いは音楽以外も含む様々なジャンルの表現者たちがモチーフにするものであるが、Lucky Kilimanjaroはここで彼らの表現手法でしか提示できない答え方を生み出している。ループするリフが止まってしまったあとにジリジリと熱を帯びながら再びアガっていくビートを浴びていると、ここ数年の物事を思い出して未来への向き合い方のヒントも見せてくれるかのよう。熊木幸丸(Vo)というソングライターにダンスミュージックへの熱狂的な愛と情熱とスキルがあるのは周知の通りだが、日本語で歌うメロディの発明者でもあることを改めて記しておきたい。四季になぞらえて完成させた今作は、彼の知的さと上品さも滲み出て、日本語特有の美しさと意味が穏やかに心に染み入るものばかりだ。(矢島由佳子)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年5月号より抜粋)
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踊る中で見つかる、変化の味わい
Lucky Kilimanjaro『Kimochy Season』
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