この曲名もそうだし、《恋人じゃなくていいからそばにいてよね/今だけ楽しい夢をみさせて》という主人公の女の子の気持ちは、いったいなんと言えばいいのだろう。私は彼のことが好きだけど彼はたぶん私のこと好きじゃないし、でも何かにつけ「会いたい」とか言ってくるし、とか言ってる私のほうが真面目すぎるのかも……というこの気持ち。人生の先輩としてはそんなクズ男、とっとと見限って次にいったほうがいいのではないかと思うのだが、当の本人にとってはそういうことではないというのもわかる。そして、その「そういうことではない」という微妙なニュアンスを、りょたちの歌詞とメロディはとても的確に、優しく掬い取る。状況だけ見たら痛いといってもいい非対称の恋愛なのだが、不思議と聴こえてくる曲からは悲壮感や諦めのようなものは伝わってこないのだ。上がる心拍数をそのまま音にしたようなイントロのドラムからジェットコースターのようなベースライン、軽やかといっていいギターのアレンジまで、紋切り型のその先にある心情を炙り出すのがやっぱりこのバンドは抜群に上手い。(小川智宏)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年5月号より抜粋)
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