【知りたい】ねぐせ。はこの5曲を聴いてハマれ!

【知りたい】ねぐせ。はこの5曲を聴いてハマれ!
2020年8月に名古屋で結成された、りょたち(G・Vo)、なおと(Dr)、しょうと(B)、なおや(G)からなる4ピースバンド、「ねぐせ。」。「宇宙でいちばんあったかいバンド」を標榜する彼らは、コロナ禍真っただ中に結成されたバンドながら、ライブ活動を開始するや否や、瞬く間にライブハウスシーンの人気者になった。ひとたび耳に入れば胸を鷲掴みにするポップなメロディと、4人の体温がそのまま伝わってくるようなシンプルなサウンド、そして、そっと心を撫でるような歌声――聴き手の心の繊細さに寄り添うようなその親密な空気感は、間違いなく、2020年代のバンドシーンに新しい風を吹き込んでいる。そんなねぐせ。の楽曲の中から、まずは聴いてほしい5曲をピックアップし、紹介しよう。(天野史彬)


①彩り

君と僕とで暮らす日常。その日常に宿る、当たり前に魔法みたいな瞬間の数々。2021年4月にリリースされた1stミニアルバム『ハッピーな暮らし』の最後を飾るこの曲は、ねぐせ。が追い求める幸福の原風景が描かれている名曲だ。《音楽が流れるこの部屋はライブハウスみたいだ》――穏やかなサウンドに乗せて歌われるこんな言葉の奥には、コロナ禍の閉塞感の中でも、寄り添い合いながら自分たちの手で幸福を作り出し、日々を彩りながら生きてきた若者たちの心象が映し出されていたのかもしれない。この曲に描かれた美しき恋の季節の行く末は、その後、アンサーソングである“日常革命”で描かれることになる。《悲しいことが多すぎる世界で/君だけはずっと笑っていて欲しいな》――何がどう変わろうと、この曲に刻まれた祈りが色褪せることはない。

②スーパー愛したい

2021年10月にリリースされた2ndミニアルバム『スペースシャトルで君の家まで』に収録された1曲で、同ミニアルバムのタイトルはこの曲の歌詞から取られており、ジャケットにも「SUPER aISHITaI」とデカデカと書かれている。レイドバックしたシンプルなロックンロールサウンドは、感情的な共振を求めるというよりは聴き手の体をダイレクトに揺さぶる軽快なポップネスを持っているが、不思議と、繊細で柔和なアンビエンスも醸し出している。日常と宇宙を接続するような、りょたちの脳内世界がそのまま描かれたようなシュールな歌詞も相まって、ねぐせ。というバンドの魅力と謎が一気に噴出した決定的な1曲と言えるだろう。《あー君がいれば君がいれば どんな複雑なファンシーも/捨てていいんだ棄てていいんだって思えるんだ!》――こんがらがった時代と心を一気に解きほぐす、優しい爆発力。これに多くの人が夢を見始めた。

③ベイベイベイビー!

解決しない心、解決しない人生、解決しない世界、解決しない君と僕。あらゆる「解決のなさ」を起爆剤にして、この2分ちょっとのロックンロールは爆発する。掛け声は、《ベイベイベイビー!》。2022年9月にリリースされた3rdミニアルバム『ワンダーランドに愛情を!』からの先行配信シングルで、コンポーザーであるりょたちの曲作りに大きな変化をもたらしたという1曲。前作『スペースシャトルで君の家まで』に収録された“スーパー愛したい”の路線を継ぐシンプルかつ肉体的なパンクサウンドに乗せて歌われるのは、自己嫌悪も他人のわからなさも隠すことなく、内省と願いを取り留めもなく羅列していく歌詞。前提には恋人との別れやSNSでの誹謗中傷などがあったようだが、そうした体験を経て、りょたちの眼差しは、自分だけでなく人間の怒りや哀しみや弱さの奥底を覗き込むような普遍性と純粋さを獲得した。

④グッドな音楽を

“ベイベイベイビー!”と同じく3rdミニアルバム『ワンダーランドに愛情を!』からの先行配信シングルとなった1曲で、印象的なイントロの参照点となったのは、『ちびまる子ちゃん』でお馴染みの“おどるポンポコリン”だという。そんなファニーなポップセンスがねぐせ。らしさと言えるが、結果として、この曲はTikTokを通して大きなバズを引き起こし、一躍、バンドの新たな代表曲の座に躍り出た。《紛争戦争、誹謗中傷、これって重症?》と、りょたちの目から見たこの世界の景色と、彼自身の内面が混在して描かれていく歌詞の中、サビで歌われる《ホットでグッドな音楽を 歌い続けてみたらいい》という歌詞は、自らに言い聞かせるような力強さを感じさせる。ねぐせ。が音楽を奏でる理由そのものが、ポップに、切実に、鳴り響いている。

⑤日常革命

3rdミニアルバム『ワンダーランドに愛情を!』の最後を飾るバラードであり、前述したように“彩り”のアンサーソング。りょたちが恋人と別れた後、その元恋人の目線になって書いたという。“彩り”では《時々ドキドキするようなことがあってもいいけど/常に安心するような日々の方が愛しいよね》と歌っていたが、そんな愛おしい日々にもいつしか終わりが来ることを、この曲は告げている。歌詞に出てくる《悲しい革命》という表現が見事だ。革命とは、何かを勝ち取る為だけに起こることではない。革命とは、時として大きな喪失を伴って日々の色を変えていくものでもある。だからこそ忘れてはいけないことが、この曲には書き記されていると言える。たとえば、こんな一説――《そこまでお金がなくても そこそこ楽しくやれてたな/でも愛がないと何もかも消えていく》。他者の目になりながら、ふたりの間に漂った「痛み」すら曲にして刻まざるを得なかったリアルさもまた、ねぐせ。の特別さといえるだろう。

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