惹かれた音楽をそのまま真似るのではなく、震えた心が導いた音を素直に反映しているように感じられるこれらの曲に渦巻いているものには、「憧れ」という言葉がとてもよく似合う。実際に会ったことがあるわけではないイエス・キリストと十二使徒を想像しながら『最後の晩餐』を描いたレオナルド・ダ・ヴィンチ。北欧神話をモチーフとして楽劇『ニーベルングの指環』を作曲したリヒャルト・ワーグナー。実在する銀色の自動車=デロリアンを改造した姿として未だに架空の存在=タイムマシンのデザインを提示した『バック・トゥ・ザ・フューチャー』……などなど、「こんな感じだろうなあ」、「こんな風だったらいいなあ」、「こんなだったら楽しい」と自由に想像を羽ばたかせた人間の心は、とても美しいものをたくさん生み出してきた。それは真実とはかけ離れたものだとしてもリアル極まりない。そういうものに通ずるフレッシュな息吹に満ち溢れながらオリジナリティを発揮している彼女の音楽を聴くのは、桁外れにワクワクできる体験だ。身体能力の圧倒的な高さに裏打ちされた予測不可能な動きのダンスとアクション。ステージと客席の境を一切作らずに繰り広げるスリリングなライブパフォーマンス。「株式会社 会社じゃないもん」の代表取締役社長として次々と打ち出す斬新な経営ビジョン、狂熱の株主総会、バスジャックライブや無人島イベントなどのブッ飛んだ企画。突然ファンに呼びかけて行うハンカチ落としや、どーんじゃんけんぽん大会。ハゲに対する並々ならない深い関心と愛情。ビルボード1位やグラミー賞受賞を目標として掲げるスケールの大きさ……魅力は、その他にもいくらでも挙げられる。そして、そんな彼女が自身を「シンガーソングライター」や「アーティスト」ではなく、「弾き語りトラックメイカーアイドル」と称していることにも触れておきたい。昨年、本人にこの点に関して訊いたところ、「アイドル」という呼称がマイナスに働く場面も大いにあり得ることを承知しているが、明確なジャンルとしての枠組みがあるわけでもないこの言葉が含んでいる可能性は無限大であり、音楽だけにとどまらないあらゆる活動をエンターテインメントへと昇華することにも繋げられるのだという旨を語っていた。彼女の核にある雄々しいファイティングポーズが窺われて、とても嬉しい気持ちになった。テレビやラジオなどを通じて眉村ちあきに触れると天真爛漫な発言や行動が目や耳に留まりやすいのは事実であり、容姿も思わず顔が綻ばずにはいられないほど愛らしい。しかし、彼女の本質にあるのは音楽家としての圧倒的な表現力、クリエイターとしての豊かな才能、人としての美しい志の高さだ。その点は実際に曲を聴けば真っ直ぐに伝わってくるので、興味がある人は早速チェックした方がいい。本人の言葉を借りるならば「メジャー感のある曲」である“ピッコロ虫”や“ブラボー”辺りが、まずは最初の入り口として最適だろう。そして、“荻窪選手権”や “ナックルセンス”を聴きながら無我夢中で踊ったり、“宇宙に行った副作用”や“東京留守番電話ップ”で妖しい異世界を感じたり、“ツクツクボウシ”や“ビバ☆青春☆カメ☆トマト”を元気いっぱいに歌ったり、“スーパーウーマンになったんだからな!”や“おじさん”で涙腺を緩ませたりしたら、あなたは立派なマユムラー(眉村ちあきファンの呼称)だ。その先には、楽しくて仕方がない世界が広がり続けることを全力で保証する。(田中大)
【知りたい】眉村ちあきの「生きている」ことの汚さまで描き切る志の美しさについて
2019.05.10 12:15
惹かれた音楽をそのまま真似るのではなく、震えた心が導いた音を素直に反映しているように感じられるこれらの曲に渦巻いているものには、「憧れ」という言葉がとてもよく似合う。実際に会ったことがあるわけではないイエス・キリストと十二使徒を想像しながら『最後の晩餐』を描いたレオナルド・ダ・ヴィンチ。北欧神話をモチーフとして楽劇『ニーベルングの指環』を作曲したリヒャルト・ワーグナー。実在する銀色の自動車=デロリアンを改造した姿として未だに架空の存在=タイムマシンのデザインを提示した『バック・トゥ・ザ・フューチャー』……などなど、「こんな感じだろうなあ」、「こんな風だったらいいなあ」、「こんなだったら楽しい」と自由に想像を羽ばたかせた人間の心は、とても美しいものをたくさん生み出してきた。それは真実とはかけ離れたものだとしてもリアル極まりない。そういうものに通ずるフレッシュな息吹に満ち溢れながらオリジナリティを発揮している彼女の音楽を聴くのは、桁外れにワクワクできる体験だ。身体能力の圧倒的な高さに裏打ちされた予測不可能な動きのダンスとアクション。ステージと客席の境を一切作らずに繰り広げるスリリングなライブパフォーマンス。「株式会社 会社じゃないもん」の代表取締役社長として次々と打ち出す斬新な経営ビジョン、狂熱の株主総会、バスジャックライブや無人島イベントなどのブッ飛んだ企画。突然ファンに呼びかけて行うハンカチ落としや、どーんじゃんけんぽん大会。ハゲに対する並々ならない深い関心と愛情。ビルボード1位やグラミー賞受賞を目標として掲げるスケールの大きさ……魅力は、その他にもいくらでも挙げられる。そして、そんな彼女が自身を「シンガーソングライター」や「アーティスト」ではなく、「弾き語りトラックメイカーアイドル」と称していることにも触れておきたい。昨年、本人にこの点に関して訊いたところ、「アイドル」という呼称がマイナスに働く場面も大いにあり得ることを承知しているが、明確なジャンルとしての枠組みがあるわけでもないこの言葉が含んでいる可能性は無限大であり、音楽だけにとどまらないあらゆる活動をエンターテインメントへと昇華することにも繋げられるのだという旨を語っていた。彼女の核にある雄々しいファイティングポーズが窺われて、とても嬉しい気持ちになった。テレビやラジオなどを通じて眉村ちあきに触れると天真爛漫な発言や行動が目や耳に留まりやすいのは事実であり、容姿も思わず顔が綻ばずにはいられないほど愛らしい。しかし、彼女の本質にあるのは音楽家としての圧倒的な表現力、クリエイターとしての豊かな才能、人としての美しい志の高さだ。その点は実際に曲を聴けば真っ直ぐに伝わってくるので、興味がある人は早速チェックした方がいい。本人の言葉を借りるならば「メジャー感のある曲」である“ピッコロ虫”や“ブラボー”辺りが、まずは最初の入り口として最適だろう。そして、“荻窪選手権”や “ナックルセンス”を聴きながら無我夢中で踊ったり、“宇宙に行った副作用”や“東京留守番電話ップ”で妖しい異世界を感じたり、“ツクツクボウシ”や“ビバ☆青春☆カメ☆トマト”を元気いっぱいに歌ったり、“スーパーウーマンになったんだからな!”や“おじさん”で涙腺を緩ませたりしたら、あなたは立派なマユムラー(眉村ちあきファンの呼称)だ。その先には、楽しくて仕方がない世界が広がり続けることを全力で保証する。(田中大)