①恋愛凡人は踊らない
2020年のアルバム『koroshimonku』に収録され、後にリテイク版も制作された、彼らを代表するアッパーチューン。速めのBPMでグイグイ攻める4つ打ちビートに歯切れのいいギター、即効性充分のメロディといったライブやフェスの現場で先陣を切るのにもってこいの要素が詰まっている。ただ、ゴリゴリの失恋ソングでもあり、サビの《もう痛い愛、逢い、会い、愛してるって》《解ない愛、相、哀、阨を纏って》など、難解なのに極めてキャッチーなハマり方をしたラインや、かなり辛辣な言葉を吐いておきながら《許さんぞ》とどこかコミカルに締めてみせるあたり、独特なバランス感覚が見て取れる。②オムライス
2021年のシングル『ポニーテールに揺らされて』のカップリングながらMVも作成され、ライブでもラストに披露されたりと欠かせない存在となっている曲だ。タイトル通り、全編にわたってオムライスのことが歌われる。正確に言えば、オムライスの存在を通して僕から君への想いが一人称で展開されていくのだが、《難しそうで意外と簡単な/かと思って油断してたら奥が深い/オムライスは/まるで君みたいだな》と想像するかわいらしさに騙されてはいけない。最終的にはオムライスより《君が欲しいし》《今夜、君を食べてしまおうか》ときっちり欲望も曝け出す。それをあくまでポップに弾む曲調とともにさらっと楽しく聴かせ切るのがミソ。③カスミソウ
彼らの存在を全国区へと押し上げた、代表曲のひとつ。2022年に配信リリースされ、2024年の2ndフルアルバム『HOME』では1曲目を飾る、タイトルから連想される儚げなイメージとは裏腹にブラスサウンドを取り入れ、ビート感も強めの晴れやかな曲となっている。好き勝手振り回した挙句去っていった恋人に向け、未練はありつつも前を向こうとする主人公の姿を描き出す中で繰り返される《ありがとうね》の言葉には、曲の展開に伴う心模様の変化に合わせて様々なニュアンスを含ませている。他の箇所でも複数登場する、話しかけるような語尾の《ね》がとにかくいい仕事をしている。神は細部に宿るのだ。④#情とは
ABEMAの恋愛リアリティ番組『花束とオオカミちゃんには騙されない』で挿入歌に起用された、2023年配信のバラードソング。“カスミソウ”同様2ndフルアルバム『HOME』にも収録されている。どっしりと構えたスローテンポに繊細かつドラマティックな美メロが乗る王道感がいい。歌詞が綴るのは、過去の恋にとらわれてしまう未練っぷりとそんな己の情けなさを見つめる姿。ひと筋縄ではいかない「情」ってやつに「とは」と疑問を投げかけてタイトルに据え、そこにハッシュタグを打ったところで勝負あり。聴き手のあらゆる「情」を呼び起こし寄り添うことで、最大のヒット作となった。⑤Strawberry
2024年11月配信。こちらもABEMAの『オオカミ』シリーズの『キミとオオカミくんには騙されない』最終回のBGMとして使用された。これまでのLASTの曲にあった、シチュエーションや背景が手に取るようにわかる、映画やドラマを視聴するのにも似た音楽体験とは一線を画したアプローチを見せている。展開や起伏がほぼなく、シンプルにループするギターの上で淡々と独白するような歌は、一見とりとめのない心象の吐露なのだが、その言葉の端々や行間からはなぜだか心模様とその温度がちゃんと届く。かなり異質な意欲作だが、この曲の存在によって、彼ら自身の表現の幅もリーチ可能な層も、グッと押し広げることとなりそうだ。現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』1月号にThis is LASTが登場!
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