【知りたい】PUNPEEはなぜ才能を多数接続できるのか? 華麗なるコラボ史を紐解く

【知りたい】PUNPEEはなぜ才能を多数接続できるのか? 華麗なるコラボ史を紐解く - Photo by Ryo MitamuraPhoto by Ryo Mitamura
星野源が最新EP『Same Thing』の収録曲“さらしもの”でフィーチャーしたことで、改めて脚光を浴びているラッパー/トラックメイカー/DJのPUNPEE。このレベルになって「知る人ぞ知る」というのには少し抵抗があるのだが、実際のところ、彼の実績を総体的に把握している人はコアなファンを除いてはそれほど多くないのではないだろうか。

なぜなら、PUNPEEはこれまでのキャリアにおいて表舞台にいるようでいないようでいる、という不思議な存在感を醸し続けている男だからだ。自身のソロ名義作は2017年のアルバム『MODERN TIMES』のみで、仕事のボリュームとしては圧倒的にプロデュースやリミックス、トラック提供、そして客演のほうが目立つ。それこそTBS『水曜日のダウンタウン』のオープニングテーマ&BGM提供から全米iTunes Store 総合チャートで2位を獲得した宇多田ヒカルの『光 –Ray Of Hope MIX–(REMIXED BY PUNPEE)』でのリミキサー起用まで、彼のワークスの幅の広さと柔軟さとそこに登場する人物やトピックのデカさ(もちろん、そこに今回の星野源も連なる)は、PUNPEEという才能の何を物語るのか。ここでは特にラップ/歌でのフィーチャリングに焦点を当てて、時系列でなぞりながら考えてみたい。

2006年にフリースタイルのトーナメント「ULTIMATE MC BATTLE(UMB)」東京大会で優勝を果たすなど、早くからラッパーとしてのスキルを評価されていたPUNPEEは、2008年頃から数々の客演をこなしてきた。しかしその「声」がロックシーンやJ-POPシーンにまで届くようになったきっかけは、2013年の2つのコラボレーション、つまり後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENRATION)が同年のレコード・ストア・デイにリリースした7インチシングル『The Long Goodbye』への参加、そしてtofubeatsのデビューアルバム『Lost Decade』の収録曲“Les Aventuriers”へのフィーチャーだろう。とりわけ、tofubeatsらしい情報量の多いトラックの上で、新たな始まりの季節の胸の高鳴りと不安をティーンエイジャーの気持ちに重ねて綴ったラップが躍る“Les Aventuriers”はその内容的にアルバムのテーマソングといっていい楽曲で、PUNPEEのパートは当時のtofubeatsがおかれたシチュエーションと心情をじつに繊細にトレースしている。


続いてPUNPEEをフックアップしたのが重鎮RHYMESTERだ。2015年のアルバム『Bitter, Sweet & Beautiful』で、彼はプロデューサーとして同作中最多の5曲をプロデュースしている。特にPUNPEEが「どうしてもアルバムに入れてくれ」と言ってギリギリのスケジュールで上げてきたという“Kids In The Park”は本当に名曲である。ポップで少しかわいらしいトラックがアルバム中でも絶妙なアクセントになっているばかりでなく、この曲で彼はサビの歌も担っているのだが、ここのたった5行でPUNPEEは『Bitter, Sweet & Beautiful』というアルバムを象徴する人生の原点のような風景を描ききってしまっているのだ。


そして極めつけは同年に配信&12インチでリリースされた“お嫁においで2015”だ。リミックスアルバム『加山雄三の新世界』にも収録されたこの曲で、PUNPEEは原曲の素朴なハワイアン風情に王道のビートをかけ合わせ、ビートジャック的に全編ラップしているのだが、その《「ドープにスワッグにヒップに彼女を幸せにする」/なんて…この歳で言えたもんじゃないな》と始まるリリックがまた、原曲の背景にあった語られていない心情を詳らかにしながらモダンに再解釈するようなとんでもないものになっている。


ここまで取り上げてきた3曲に共通するのは、常に楽曲や作品の言わんとすることを汲み取り、そこに寄り添うようにラップをしていくPUNPEEの姿だ。もちろんどの歌詞にも彼自身のキャラクターや思いは滲んでいるが、それを決して強く押し出すことはしない。あくまで自然体で、彼は自己というよりも他者の代弁者のように言葉を紡ぐ。

たとえば、MPCプレイヤー/トラックメイカー・STUTSのデビューアルバムに収録されフロアアンセムとなった“夜を使いはたして”。MVに自身の父も登場させるなどいつになく自分語りをしているようなこの曲でさえ、そこにあるメロウネスは間違いなくSTUTSのトラックが呼んだものだ。PUNPEEは楽曲の作者や登場人物など他者の視点を自身に憑依させながら自分と重ね合わせ、その絶妙な重なりの中で歌う。PUNPEEがBIMの体験談をもとにフックを書いたという“BUDDY”(2018年のアルバム『The Beam』収録。このアルバムではPUNPEEが唯一のフィーチャリングゲストでもある)しかり、今年2月にリリースされたORIGINAL LOVEのアルバム『bless You!』に収録された“グッディガール”しかり。主演を張るスター俳優というより物語をうまく転がしながらキャラクターを発揮する名バイプレーヤーみたいに歌うラッパー、それがPUNPEEなのである。


最後に星野源“さらしもの”の話に戻ろう。PUNPEEは自身に与えられた最初のバースで星野の書いたこんなリリックを歌っている。

《滑稽なさらしものの歌/あたりみりゃ 一面のエキストラ/だけど君のその世界じゃ/僕も雇われたエキストラだっけ》

自らを「パンピー(一般人)」と名乗り、あらゆる色に染まりながらトラックを作りラップをする彼自身と星野源の現在地が重なる場所に“さらしもの”という曲はある。だからこそこれだけ親密でエモーショナルなコラボレーションとなったのだ。”さらしもの”はどこまでも星野源な楽曲でありながら、その意味できわめてPUNPEEな楽曲でもある。そしてそのように響くこと自体が、PUNPEEの最大の強みであり、替えの利かない魅力なのだ。(小川智宏)

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