【知りたい】Eveが作る音楽の新時代とは?最新作『おとぎ』までの道のりと共に解説

【知りたい】Eveが作る音楽の新時代とは?最新作『おとぎ』までの道のりと共に解説
Eveの勢いが止まらない。

Eveは、元々歌い手・ボカロPとして活躍していたアーティスト。2017年12月に全曲オリジナル曲のアルバム『文化』をリリースすると、2018年には東名阪ワンマンツアーおよび新木場STUDIO COASTでの追加公演を開催。チケットはいずれも即日ソールドアウトした。『文化』以前のアルバムには、カバー曲や、他の作曲家に依頼し作ってもらった曲も収録されていたが、ライブで歌った際、自分の曲を歌っていないことに違和感を抱いたのだという。自分の曲を歌いたい。そしてライブをしたい。そんな願いが基にあるからか、Eveの楽曲は、作品を通じて人(=リスナー)と交わる回数が増えるほど、色鮮やかなものになっていっている。初期に発表されたオリジナル曲のMVはモノクロ調が多かったが、次第に使用される色の種類が増えていっているのも、かなり象徴的だ。

2018年は米津玄師“Lemon”が大ヒットした一方で、ネットカルチャー発の次世代アーティストが多数躍進した年だった。その先頭にいたのが、まさしくEveだ。現在、YouTubeのチャンネル登録者数は82万人超でTwitterのフォロワー数は35万人超(2019年1月31日時点)。おそらく、仕掛け人としての才がある、頭の回転の速い人なのだと思う。Eveはトータルデザイン力に優れたアーティストであり、楽曲・MV・アートワークといった各要素を連動させながら自身の描く物語を立体的に伝えている。


先日7日前に公開されたばかりの新曲MV“僕らまだアンダーグラウンド”は、ハイクオリティなアニメーションが話題となり、早くも166万回再生を突破(2019年1月31日時点)。配信にも積極的だが、CDのアートワークに拘ることにより、モノを手に取ることの面白さも提案している。因みに彼にはデザイナーとしての顔もあり、ファッションブランドも手掛けているというのだから抜かりがない。このように、Eveは「知れば知るほど」的な奥行きと導線を用意することに周到なアーティストである。ファンからすると、そのハマり具合に応じて、様々なコンテンツにアクセスすることのできる環境が用意されているようなイメージ。SNSにて、ファン同士がそれぞれの考察に基づいたやりとりを盛んに行っているのもそのためだろう。

Eveの楽曲では「個」と「世界」の対比が描かれているケースが多く、少年性・透明感のあるボーカルによって歌われているのは、人知れず抱える孤独感や、それでも誰かと繋がりたいと願う気持ちである。そういった感情は現代社会を生きる人々にとって普遍的なもの。フィクションを媒介として現実を射抜くことのできる、鋭い視点を持ったアーティストであることもここで特筆しておきたい。2月6日(水)にリリースされるアルバム『おとぎ』はそういったEveの巧妙さが遺憾なく発揮された作品だ。

2018年までの流れを踏まえて今年注目すべきなのは、Eveをはじめとしたネットカルチャー発のアーティストが一般リスナーにまで認知されるようになるかどうか、ということだ。その点に関して、Eveはかなり積極的であるように思える。“僕らまだアンダーグラウンド”MVのプロデューサーにヒットメーカーとして知られる川村元気を迎えたのも、そういう思惑があったからだろう(その他にも錚々たるメンバーが携わっている)。

Eveがメインストリームに浮上した時にどういうことが起こりうるのか――というところに思いを巡らせてみると、例えば米津玄師・星野源三浦大知らが現在そういう役割を果たしているように、Eveの作品自体が「優れたクリエイターにスポットライトを当てる場」として機能するようになる可能性もある。今後そんな未来が訪れるのだとしたら、ネットカルチャーはさらに盛り上がるだろうし、これまでとは全く異なる文化が生まれることもありえるのではないだろうか。未来の鍵を握るアーティスト・Eveに引き続き注目だ。(蜂須賀ちなみ)
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