①デリート
ゆるめるモ!脱退から約1年後の2020年9月にソロとして音楽活動をスタートさせたano。インディーズで最初にデジタルリリースしたのが、この“デリート”だ。作詞はano自身が、作曲と編曲はTAKU INOUEが手がけている。アイロニカルなポエトリーリーディングのように言葉を紡いで表現するネガティブな思考と、サビに垣間見る、「君」がいるのなら笑ってやり過ごせるのではないかという期待と、それも叶わないのなら「デリート」してしまおうという破滅的な欲求と。破壊衝動を微塵も隠そうとしないanoの歌は衝撃的だった。不穏なロックサウンドに彩られた楽曲は、anoが再び表現活動を行うために吐き出されるべきリアルだったのだろう。②SWEETSIDE SUICIDE
2021年2月にデジタルリリースされた3rdシングル。ano名義としては初めて自身で作詞・作曲ともに手がけた楽曲となる。この曲の前作にあたる“Peek a boo”でもタブー視されそうな死生観を歌詞にしたanoだが、“SWEETSIDE SUICIDE”にはその「生」と「死」を巡る思考の源泉を見る。1コーラス目では《世界滅びないなら君と 死にたい》と歌い、2コーラス目では《世界滅びてもふたりで 生きたい》と歌う。相反する思考のようでありながら、この2項の間にはなんら矛盾はない。「生」か「死」かよりも、愛する人がそばにいるかいないか、そちらのほうがはるかに重いのだ。究極的なラブソングであるとも受け取れる。シンガーソングライターとしてのanoのポテンシャルが開花した一曲だ。③F Wonderful World
“SWEETSIDE SUICIDE”に続いて、2021年8月にリリースされたシングル曲。テレビ朝日のバラエティ番組『あのちゃんねる』のオープニングテーマとしても流れていた。作詞はano(名義は「あの」)、作曲と編曲はTAKU INOUE。これまでの内省的な楽曲とは一線を画す、どこかコミカルで、自らの生きづらさまでも笑って蹴り飛ばすような、ある種の爽快ささえ感じられる楽曲。デジタルなロックサウンドに、跳ねるようにハマるanoの押韻が心地好い。《僕以外誰が僕になれるの/君以外誰が君になれるの/後ろ向いた時だって後ろ指さされたって/中指立てて正解 世界、今に見ておけば良いさ》という痛快な歌詞も含め、ポジティブな躍動感を見せる楽曲。④普変
2022年4月に“AIDA”でTOY’S FACTORYからメジャーデビューを果たし、同年10月にはメジャー第2弾楽曲としてこの“普変”がリリースされた。作詞・作曲を手がけたのはanoが敬愛するクリープハイプの尾崎世界観。anoが抱えてきた「普通じゃないことが普通」という苦しみや苛立ちを「普変」という造語で言い表した尾崎のソングライティングが光る。小川幸慈(クリープハイプ/G)、中尾憲太郎(B)、BOBO(Dr)と鉄壁の布陣が奏でるバンドサウンドにanoが自身の想いをぶつけるように、ストレートに歌い切るのも切実ながら痛快。《怒ってる? 別に普通》という、無遠慮で無粋な投げかけとそれに対する答えとを歌詞にすることで、anoの抱える生きづらさが浮き彫りになる。anoと同じ痛みを抱える者にとっては救いになるような楽曲だ。⑤ちゅ、多様性。
メジャーでの3rdデジタルシングルとなったのが、この“ちゅ、多様性。”。2022年10月から放送されたTVアニメ『チェンソーマン』は、放送開始に先駆けて週替わりで12組のアーティストがエンディングテーマを担当することがアナウンスされていて、その中の1組としてanoが抜擢され、この楽曲が生まれた。今作は真部脩一(ex.相対性理論)との共作で作り上げた楽曲であり、anoは作詞に携わっている。跳ねるリズムとそこはかとなくチャイニーズなメロディラインにanoの毒っ気のあるキャンディボイスが乗り、面白いように韻を踏んでいく。その遊び心満載の展開がとにかく楽しい。anoに内在するキュートさとダークさが見事にポップに昇華された、ソロアーティストとしての新境地を開いた楽曲である。現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』12月号Look Up!にanoが登場!
●主なラインナップ
・桑田佳祐
・SEKAI NO OWARI
・エレファントカシマシ
・Mrs. GREEN APPLE
・YOASOBI
・UNISON SQUARE GARDEN
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