【知りたい】ひかりのなかにが退屈な毎日を抜け出すために音楽を鳴らす理由とは?

【知りたい】ひかりのなかにが退屈な毎日を抜け出すために音楽を鳴らす理由とは?
2017年に高校の軽音楽部で結成された「ひかりのなかに」。結成1年半にしてRO JACK for COUNTDOWN JAPAN 18/19で優勝し、COUNTDOWN JAPAN 18/19に出演。青春の勢いと瑞々しさをそのまま爆発させたようなストレートなサウンドを鳴らす、スリーピースロックバンドだ。
現役高校生が結成というキーワードだけを聞くと、バンド名のように眩しい日々の真っ只中にいるように見えるかもしれない。その音のように、迷いなく夢に突き進んでいるように見えるかもしれない。でも、10代の頃の毎日って、青春って、無条件に輝かしいものだろうか。のびのび生きろと背中を押されながら不自由にとり囲まれ、夢を見ろと言われながら理不尽と戦っていなかっただろうか? 10代だからってキラキラしているだけじゃない、むしろ10代だからこそのイライラも、トゲトゲした感情も、すべてを真空パックにして表現するのがひかりのなかにのロックだ。


2019年リリースの1stミニアルバム『放課後大戦争』の1曲目、フォーカウントで走り出すロックナンバー“冴えない僕らに灯火を”では、《毎日悲鳴をあげている/140字収まりきれない感情が/積み上がってく/追いかけ回されくたびれるな/ここから早く抜けだそうぜ/馬鹿らしい日常は捨ててみて》と歌っている。SNS上の140文字以内だとか15秒以内だとかで器用に自己表現して、上手くバズらせるのが主流だとしたら、「ロックバンド」はまさにそこからはみ出た存在だ。スマホ一台で完結する時代に、楽器を持って集まって、自分の声で叫ぶこと。その意味、その喜びを、ひかりのなかにのメンバーは噛みしめているに違いない。

同作収録の“舞台裏”では、まさにそのはみ出した想いそのもののような《諦めるないつか夢は叶うし/挫けずに明日へ走れ/そういう歌を全部掻き集めて/燃やしてやりたかったんだ》というアカペラの歌い出しに心を掴まれる。《吐き気がするほどマニュアル通りの/のっぺらぼう達の中で/ぼくだけ違うって思ってた》、《良い子ちゃんに成り下がってたまるか》と、暴発するルサンチマンも痛快な一方で、“瞬間プラトニック”では《あの子がアイツと/恋をしてしまったら/大人に変わってしまうだろう/染まらないように 守れたらいいのに》とピュアな想いにくすぐられたりもする。
そうして揺れ動くリアルな感情を真空パックできているのは、ヤマシタカホ(Vo・G)の歌声の力だ。何色にも染まらない伸びやかな発声は、息継ぎさえも惜しむような勢いとともに、少しだけ背のびして響かせる高音が心地好い。ただ叫ぶことで発散しているのではなく、自分だけの言葉をその一瞬に刻みたい、そしてその言葉をどこかできっと待っている「誰か」に届けたいという想いが芯にあるからこそ、彼女の声はまっすぐに飛んでいく。

そんな彼女たちも、今年3月で卒業。卒業のタイミングで発表された最新曲“ロンググッドバイ”では、《さくら、さくら咲いてくれるなよ》と「今」の想いを表現した。秘めた恋も、戦ってきた不自由もルーティーンも終わってしまう卒業。未来に駆け出したいような、でも一歩踏み出すのが怖いような感情を《さくら咲いてくれるなよ/きみのこと連れ去ってしまうなよ》と素直に歌うのが彼女たちらしい。
そして高校卒業後、早速4月22日(水)にはデビューミニアルバム『トーキョー最前線』をリリースする。素直な戸惑いも抱いたまま新しい世界へ歩き出したひかりのなかにが、これからどんな想いを乗せて、どんなロックを生み出してくれるのか、そこに広がる無限の可能性に注目だ。(後藤寛子)
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