ネットの検索窓で「彼女」と入力すると、こんな言葉が予測表示される。「彼女 可愛くて仕方ない/彼女 好きすぎる 離したくない/彼女 甘えんぼ」、その一方で「彼氏」と打ってみるとこうだ。「彼氏 好きかわからないとき/彼氏 冷めた/彼氏 別れるか悩んでる」――ちょいと女子、辛辣すぎやしないか。でも実際に、女子は男子の想像よりもはるかに現実主義だと思う。その可愛らしい見た目の裏にはしたたかさも隠し持ち、時には面倒くさい感情に振り回され、そして何度でも立ち上がれる強靭さも秘めている。
コレサワは、そんな女子のリアルな実態や本音を、包み隠さず歌にするシンガーソングライターだ。特に10代、20代からの支持を集める彼女の楽曲には、女子なら誰もが共感できるワードが詰め込まれている。女子同士でしか話せないちょっと後ろめたいことも、コレサワの手にかかればキュートなポップソングに変身する。ちなみに「女子」というのは年齢の枠ではなく、その心を持って生まれた人たちなら誰もが理解できる概念のようなものだと思う。だから彼女の楽曲が刺さる層はもっと広いはず。
そんなコレサワが生み出す「恋と対峙するヒロインたち」は、作品によって様々な表情を見せてくれる。例えば、“彼氏はいません今夜だけ”で描かれているヒロインは、浮気心に負けて嘘をついてしまう小悪魔。《ちょっとドキドキしたいの/でも家には帰してね》という歌詞からは、ペロッと舌を出す仕草が似合うコケティッシュな魅力が滲み出ている。一方で“あたしを彼女にしたいなら”のヒロインは、少し気が強くてしっかり現実を見ているタイプ。《「生まれ変わっても一緒」 「この手は離さない」とか/ダサいからマジでいらない》なんて厳しいことを言うのに、映画の予告で泣いてしまうくらい泣き虫な一面もある。
そして、現時点でYouTubeの再生回数2600万回超えの人気曲“たばこ”では、「君」と一緒に住んでいた部屋にひとりぼっちになった「僕」の姿が切り取られている。自分のわがままを後悔しながら、大嫌いなたばこをひとくち吸ってむせてしまうシーンはあまりにも切なく、感情移入せずにはいられない。同曲には続きがあって、今年発表された“恋人失格”は「君」目線からこの別れを描いたアンサーソング。2曲を並べて聴くことでふたりのすれ違いがくっきりと浮かび上がり、「僕」が好きな人の前では泣けないくらい強がりだったということがわかる。
その他にも、彼の好みの女の子になりたいのに自分に自信がなくて髪を切れなかったり、満員電車で君とくっつくことを目論んだり、昔キスをしたあいつを思い出したり、あの人のオンリーワンになれず「悪いユメ」から覚めることが出来なかったりと、それぞれにチャーミングで愛すべきヒロインたちが登場する。多くのリスナーが自分自身と重ねてしまうヒロインの魅力は、コレサワの鋭い洞察力によって生まれたとも言えるけれど、その根底にあるのは全ての女子への尊敬とエールの気持ちなのだ。(渡邉満理奈)
【知りたい】コレサワが歌う全ての女子へと捧げる恋の曲はなぜ泣けるのか?
2019.08.30 12:00