【知りたい】ドラマストアはなぜ私たちの日常を舞台に変える魔法を持っているのか?

【知りたい】ドラマストアはなぜ私たちの日常を舞台に変える魔法を持っているのか?
関西発の4ピースバンド、ドラマストア。各メディアやイベントのタイムテーブルでこのバンド名を見かける機会が増えたため、彼らのことが気になっていたという人も多いのではないだろうか。各地のサーキットイベントにも意欲的に出演していて、昨年頃から入場規制が多発している状況。この夏には渋谷WWWでのワンマンを即日ソールドアウトさせていて、現在行われているツアーは年明けの1月11日(土)、渋谷CLUB QUATTROでファイナルを迎える。YouTubeにアップされているMVも反響が大きい。この原稿を書いている時点では、最も人気の“至上の空論”が193万回再生超。また、最新曲“ラブソングはいらない”は公開から2ヶ月足らずで20万回再生を記録している。


前身バンドの頃からの仲だった長谷川海(Vo・G)、松本和也(Dr・Cho)らによってバンドが結成されたのは2014年9月。メンバーチェンジを経て、サポートメンバーだった鳥山昂(G・Key)、髙橋悠真(B)が順に正式加入し、2018年5月に現編成に固まった。ディスコグラフィの節目にあたるのは2017年4月にリリースされた2ndミニアルバム『白紙台本』。それまでドラマストアは「正統派ギターロックバンド」と自称していて、そもそもメンバーのなかにキーボーディストがいなかったが、鳥山が制作に参加するようになった同作を機にサウンド面を一新。これ以降、「正統派ポップバンド」と名乗るようになっている。リード曲“至上の空論”はラストにどんでん返しのあるMVとの相乗効果もあり、バンドの存在が広く知られるきっかけとなった。

現状、作曲を手掛けるのは主に長谷川と鳥山の2名だが、そこに対して他のメンバーも積極的に意見を出したりしているため、作曲・編曲のクレジットが「ドラマストア」となっている曲も多い。曲を作るうえで彼らが大切にしていることは「当たり前を一度疑う」、「ベタを覆す」こと。例えば“ラストダイアリー”という曲はBメロが7拍子になっていたり、曲中何度も転調したり……と凝った構成だが、それらはバンドのリーダー・松本のアイデアだという。ドラマストアの基盤にあたる、オーソドックスに美しいメロを紡ぐことのできる長谷川。鍵盤弾きならではの曲の運び方を取り入れ、バンドの新たな武器を生み出した鳥山。2人が生み出した曲を一度客観視し、そこに対して総合的判断を下していく松本、髙橋。そんな関係性から生まれるドラマストアの曲には「ポップバンド」を名乗る彼らならではの親しみやすさと反骨心が垣間見える。


作詞を手掛けるのは主に長谷川で、既存の固定観念に対して、疑問を投げ掛けたり、新しい解を提唱したりする種類の曲が多く、特にここ最近はその傾向が強くなってきている。例えば“ラブソングはいらない”の出発点は「プロポーズは男性からでなければならないのか」という疑問であり、“秘密”は「恋心とは本当に男女の間にしか存在しないものなのか」という疑問から膨らんでいった曲なのだという。こう書くと、何やら道徳的で難しいことを言っているように思われるかもしれないが、歌詞は一人称による口語体が主で、何かを主張するような温度感ではないため、押しつけがましさがあまり感じられない。また「発信者でありつつ受信者でありたい」という思いからか、ボーカリストでもある長谷川自身はストーリーテラーに徹していて、聴き手に想像の余地を残しているような感じがある。


《このまま帰さないで/私はこれでいいのに/真面目な君はね ごねてる私を/車で運ぶ 駅のロータリー》(“ラブソングはいらない”)
《君には言えない ほんとのことも ほんとじゃないことさえも/さよならもできない きっとこのままずっと想ってる》(“秘密”)

ストーリー性の高い楽曲群は映像との親和性が高く、ドラマストアはMVのブランディングにもこだわっている。“世界はまだ僕を知らない”は「こういうMVが撮りたいからこういう曲を作ろう」というところから始まった曲らしく、そんなエピソードからも、彼らがMVを重要視していることが伝わってくる。MVの多くはハクシ(ex.トウメイモード)のオカダトウイチロウが監督として携わっており、構想段階から彼に一任している作品もあれば、長谷川が脚本の原案を書いた作品もある。どれも短編映画のようで、非常に見応えがあるため、ぜひチェックしてみてほしい。


「当たり前」の外側へとあなたを連れ出し、その舞台をカラフルに彩ってくれるようなドラマストアの音楽は、(結成当初から掲げるキャッチコピーにあるように)まさに「君を主人公にする音楽」と言えるだろう。自分だけの人生を謳歌するあなたの喜怒哀楽を、彼らの音楽は祝し、彩ってくれるはずだ。(蜂須賀ちなみ)
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