【知りたい】リュックと添い寝ごはんの「自分ごとの青春」が今、静かな共感を呼ぶ理由

【知りたい】リュックと添い寝ごはんの「自分ごとの青春」が今、静かな共感を呼ぶ理由
ここ数年、高校生の軽音楽部でムーブメントが起こり始めている。10代限定のロックフェスやコンテストが存在する一方、「高等学校軽音楽コンテスト」が2013年に全国大会へと規模を広げ、それ以外の軽音楽部向けコンテストや大会も増えた。
そこにネットオーディションやYouTube、SNSといったプラットホームが加わることで、軽音楽部の世界は外へと発信できるようになった。言い換えるならば、学校という枠を超えて高校生が高校生の作る音楽を探しやすい時代になったということだ。いつの時代もムーブメントを作り出すのは若者であり、彼らは可能性を秘めた同世代の才能人を見つけることに秀でている。リュックと添い寝ごはんは、その文脈から音楽シーンに現れた2001年度生まれの3人組。軽音楽部が強いという理由で高校を決めたという松本ユウ(Vo・G)と宮澤あかり(Dr)、以前よりベースをやっていたという堂免英敬(B)と当時のギタリストによって2017年秋に同高校の軽音楽部で結成された。松本は入部当初から堂免と当時のギタリストに白羽の矢を立て、宮澤は松本のボーカルに魅力を感じて声を掛けるなど、音楽やバンドを趣味以上のものにするためにつねにアンテナを張っていた。

高い志と意識を持って活動を開始した彼らは様々な高校生大会で結果を残し、ライブハウスでの活動も並行させる。現地に足を運ぶ高校生からの認知度も高まり、EggsやSNSなどでシェアされるようになるなど追い風が吹くなか、高校3年生の夏にRO JACK for ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019にて優勝。現在も着々と知名度を伸ばし続けているという、まさに行動力と実力でもって勝ち上がってきたバンドだ。

ソングライターはフロントマンである松本。彼が楽曲で描いてきたのは「今の自分だからこそ感じられる想い」や「今の自分が過ごしている日々」だ。たとえば“サニー”なら《大好きな音楽を 圧もなく楽しみたい》や《溜まってたことが/声にできず/やめたくなった/苦しかったな》など、ふと独り言として漏れてしまったような願いや本音を、複雑かつ豊かなコードワークと滑らかなメロディに乗せる。感傷的でありつつもどっしりと揺るがないサウンドスケープを繰り広げるところに、バンドの頼もしさや強い芯を感じさせる楽曲だ。

純粋がゆえの反抗心や前進していくという意志を感じさせる彼らの音は、同世代の心を大きく揺さぶったのではないだろうか。それはただ共感できるだけではなく、晴れるかどうかわからない未来に向かって歩み続けようと鼓舞する力があるということだ。その理由は、松本の「変わりたい」=「歩みを止めない」という性質が影響していると推測する。爽やかな疾走感のある“ノーマル”にも《明日こそは 僕変われそうとか》など、「変わる」や「明日」という言葉が多い。どうなるかわからない未来に不安を抱きながら、最も近い未来である「明日」に願いをかけて、新しい自分を求めている――すなわち未来へと自分自身を突き動かすために自分の唄を歌っている。


そして楽器隊は彼の願いや想いを最も良い状態で鳴らすべく、真摯に楽曲へ向き合う。こんなにも切実かつ誠実で、ドラマチックでリアルな美しい青春を目の当たりにし、心の奥底で燻ぶっていた願いや想いに火をつけられてしまった人、自分の青春時代がありありと蘇ってきた人も多いのではないだろうか。

彼らは1stミニアルバム『青春日記』リリースと同時に高校を卒業。同作にはボサノバ風のアコースティックギター弾き語り“500円玉と少年”や、軽やかな春風を彷彿とさせる“グッバイトレイン”といった、バンドの新たな表情を覗ける楽曲も収録されている。変化の真っ只中であることに加え、“青春日記”の《僕らの青春は/ここから始まる》という一節のように、広い世界へと旅立つ彼らは、これからきっとこれまでに見たことがない青春を体感するだろう。その時どんな音楽が彼らから生まれてくるのか、期待して待ちたい。(沖さやこ)

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