①ジャージ
2022年9月にリリースされた1stデモEP『鯖ノ壱』に収録されており、今ではサバシスターの代表曲に成長。サバシスターが結成されたのは2022年3月だから、ずいぶん素早く自分たちの「道」や「色」を見定められたのだなあと、感心せずにはいられない。《可愛かった君とあのジャージは/知らん誰かに取られたし》という愚痴(!?)と、《このままどっかへ逃げようったって/足は速くないし》という本音。等身大の自分が、ほのかに哀愁漂うメロディで歌われる。そして《嘘つきはどっかで死ぬ》という無邪気にしてドキリとするフレーズや、《地下二階はすぐにソールドアウトするさ/探しものはたいていここで見つかるはずだよ》などのライブハウスを思わせる歌詞からは、彼女たちが大事にしているものが見えてくる。
②タイムセール逃してくれ
2023年3月にリリースされた1st EP『アテンション!!』収録。《タイムセール》なんて庶民派すぎるワードをタイトルに掲げるとは何者だ!?と多くの人が衝撃を受けたに違いない(私も)。しかも「タイムセールに間に合わない」焦りを歌っているのではない、「逃してくれ」って、どういうこと!? 聴いてみると、イントロから切なさがにじみ出てくるメロディで《手に届くものばかりじゃ、世の中/腐って消えてしまうよ》など、幸せな今に抱く危機感を歌っているのだ。結成して、トントン拍子に才覚を発揮しながら、こんな素直に感情を吐露してしまうボーカル・なちのニューヒロイン感に、世間が気づきはじめるキッカケになった1曲。③サバシスター's THEME
同じく1st EP『アテンション!!』に収録されており、「テーマ」と名づけられている通り、サバシスターのキャラクターを思いっきり表明したような楽曲。冒頭で《ぶりぶりあざとい女にも興味ない》と歌っておきながら、2番では《ぶりぶりあざとい女にほんとはなりたい!》と本音を丸出しに。そして、《ギャンギャン泣いても泣いても泣いても/わたしはわたし》と、かっこつけない素顔も見せてくれる。さらに、軽快なロックンロールの曲調にのせた《いつか絶対報われるはずさ》というフレーズには、聴き手の素顔も受け止めてくれる包容力も表れている。④覚悟を決めろ!
2024年3月リリースの1stフルアルバム『覚悟を決めろ!』表題曲。切れ味鋭い演奏や疾走感、そして《手首の傷》という衝撃的なワードからはじまる歌詞。確かにサバシスター自身も覚悟を決めたことが伝わってくるような楽曲だ。《どんなに速く走り抜けてもいつかは息が切れて止まる》という、終わり──もっと言えば死を想像してしまうような歌詞を、1stフルアルバムという華々しいはじまりのタイミングで書くなちは、やっぱりただ者ではない。《さみんだろー、僕のこの歌/誰にでもできるとか言われるよ》なんて歌いながら、親しみやすいけれど誰にもできないパフォーマンスを、サバシスターはやってのけている。⑤ハイエースナンバー
2024年9月リリースの2nd EP『あの夜のはなし』収録。哀愁ただようメロディで、ハイエースでライブハウスを回る様子を描く、ロックバンドらしい楽曲。まっすぐなようでいて、聴けば聴くほどに面白い。ナンバーワンの象徴ともいえる《富士》というワードと、《あの富士を登って見える景色は/同じでいたいな》《あぁ、僕らナンバーワンはいらない》というフレーズ。ナンバーワンになることではなく、共に登ることを大切にしている姿勢が伝わってくる。そして《今夜はここのライブハウスで君に会いたい》と、共に登っていくメンバーにはオーディエンスも含まれているとも感じさせてくれる。変わらず身近な景色を歌いながら、自分だけ、自分たちだけで進むのではなく、みんなを引き連れていくバンドになったサバシスター。その「変わらないまま変わっていく」進化から目が離せない。『ROCKIN'ON JAPAN』11月号にサバシスターの最新EP『あの夜のはなし』のインタビューを掲載中!
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