【知りたい】Reolというマルチクリエイターが文明をアップグレードし続けるその理由とは?

【知りたい】Reolというマルチクリエイターが文明をアップグレードし続けるその理由とは?
Reolの才能がとうとう世に知られつつある。2018年にソロアーティストとして再スタートを切り、今年の春に『文明EP』をリリースし、iTunes総合チャートにて1位、オリコンチャートにて初登場7位をそれぞれ獲得。夏の「文明ココロミー」、秋の「侵攻アップグレード」と東名阪にて開催されたライブはいずれもチケット即完。10月19日に開催された「侵攻アップグレード」ツアーファイナルの新木場STUDIO COASTの観客の熱狂は彼女のアーティストとしての勢いの象徴でもあった。加えて先日はNHK総合『SONGS OF TOKYO』に出演し、全国ネット地上波初パフォーマンス。確実に着々と彼女の創成する文明が広がってきている。


なぜ彼女がここまでの支持を集めているのか。芯の強い歌声とどんな旋律も歌いこなす高い歌唱力、リズムを巧みに操るラップスキル、民族楽器を用いたアジアンテイストのエレクトロ/ヒップホップサウンド、デジタル歌謡曲、ギターの効いたバンドサウンドなどひとつの音楽性にとらわれないミクスチャー&ポップセンス、日本語を重んじた物語性の高い歌詞世界、個性的で華やかなファッションとビジュアルはもちろんだが、それらの背景には彼女の生き様がある。
彼女はシンガーソングライターであり、自身のアーティスト活動全般をセルフプロデュースするマルチクリエイターだ。2015年に「れをる」名義でリリースした『極彩色』もオリジナル楽曲で構成されており、活動初期から他者から求められることをこなすのではなく、自分自身の美学で道を切り開くことを重要視してきたように思う。そのパンクスピリットを感じさせる行動力と、他人に流されることのない凛とした佇まいはとても勇敢で、「彼女ならなにか面白いことを興してくれるはずだ」、「彼女の作る世界の続きが見たい」というリスナーの期待感を大いに煽ってきた。


彼女は作品や楽曲、ライブのコンセプトを細部まで作り込み、自身の表現欲求を最大限まで実現させている。「侵攻アップグレード」も演出やボーカリゼーション、パフォーマンスなど隅々まですべてが抜かりなく、一方《もっと馬鹿になりたい》と歌う“たい”や、ダークながらにキャッチーな“ゆーれいずみー”などでもわかるようにユーモアを混ぜることも忘れない。その完成度の高さと隙のなさは圧巻の一言だ。加えて、『ROCKIN'ON JAPAN』2019年5月号のインタビューでも「そもそもトップを取るためにやること以外に興味はない。一番じゃないと意味がないんですよ」と発言している。だが、そのために世間に迎合することはない。あくまで自分の方法論でそれを手にしないと意味がないのだ。その煮えたぎる野心もまた彼女を魅力的に映していると言っていいだろう。

10月に配信リリースされた“HYPE MODE”は、肩の力の抜けたミッドテンポのトラックに乗せて《いつもの指輪で完全武装して/夜景の上 歩けばほら/とことん平気 あたしは天下無敵だ》と歌う、自分自身を鼓舞する楽曲だ。彼女の天下無敵の強さは、武装が必要な弱さがあってこそ生まれるものなのかもしれない、と考えるとまたこれまでの表現に趣深さが加わる。来年1月にリリースするフルアルバム『金字塔』とJAPANツアー「ハーメルンの大号令」ではいったいどんな世界を作り上げるのだろうか。彼女の旅路をまだまだ追いかけたい。(沖さやこ)

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