Reol/新木場STUDIO COAST

Reol/新木場STUDIO COAST - All Photo by六波羅龍All Photo by六波羅龍

●セットリスト
01.ウテナ
02.ミッドナイトストロウラ
03.シンカロン
04.Lunatic
05.ヒビカセ
06.激白
07.ゆーれいずみー
08.カルト
09.幽居のワルツ
10.mede:mede -JJJ Remix-
11.煩悩遊戯
12.十中八九
13.極彩色
14.失楽園
15.真空オールドローズ
16.HYPE MODE
17.平面鏡
18.たい
19.劣等上等
20.サイサキ
(アンコール)
EN01.木綿のハンカチーフ~染
EN02.宵々古今


Reol/新木場STUDIO COAST

「侵攻アップグレード」という公演タイトルは、Reolの活動スタンスを明確に表していると思う。バンドサウンドが基盤になった音楽で溢れるJ-POPシーンにデジタルサウンドで攻め入ること、アジアの民族音楽的なビート感やうわものを取り入れること、日本語ラップのなかでも和の要素を引き立たせたリリックを綴ること、作品ごとに趣向を変えるだけでなく表現方法も増やしていることなど、すべてがかなり挑戦的であり、実験的だ。

Reol/新木場STUDIO COAST
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だがマニアックでもなければクローズドな印象も与えず、寧ろキャッチーに響かせるところに、ポップアイコンとしての才が光る。それを成し得るのは、隅々まで精密に練られたコンセプトが土台として存在しているからこそだろう。百発百中の射的を見ているような完成されたステージングを展開する前半、彼女の人柄が垣間見られる場面が散りばめられた後半で、東名阪ツアー千秋楽となるすし詰めの新木場STUDIO COASTを大いに沸かせた。

今ツアーのテーマは「宇宙」や「侵略」。前ツアー「文明ココロミー」の続編的位置づけだそうだ。開演前、ステージの紗幕には荒野の惑星に刺されたフラッグがはためく様子が映し出され、場内には飛行機よろしく宇宙船へ搭乗にした観客向けの機内アナウンスが流れる。オープニング映像にも宇宙船の操縦席から見えるであろう風景が描かれ、瞬く間に会場はReolの旅する宇宙空間へと染まっていった。

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“ウテナ”を歌うReolの影が大きく映し出された紗幕が曲中で落ち、本人の姿が現れるとフロアからは大歓声が。四角をモチーフにした白いオブジェやステージ、サイバーパンク的な曼荼羅が映し出された背景一面に広がるLEDモニター、恐らく宇宙服から着想を得たであろう銀色のビッグシルエットの上着を着た彼女とダンサー2名が、妖しくスリリングな楽曲の世界をより克明に描いた。

“ミッドナイトストロウラ”は背景にビビッドな色が次々と映し出され、“シンカロン”ではスケールの大きなスペイシーな映像に加えてサビでは無数のシャボン玉が会場中を飛散した。
“Lunatic”はソフトな歌声で煌びやかに届け、“ヒビカセ”はエモーショナルな歌声と、鋭さを持ちつつ飄々かつ淡々としたサウンドのアンバランスなコントラストが、摩訶不思議で奇妙な非現実感を加速させる。一気に黒い衣装に早変わりするとダンサーとともに“激白”をパフォーマンス。息つく間もなく次々と濃厚に拡張していく曲世界に、ひたすらに視覚と聴覚を刺激される。Reolの手のなかで踊らされているようだ。

Reol/新木場STUDIO COAST
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暗転したのち、LEDモニターにはシロクマと白いウサギの幕間トーク映像が流れる。両者によるゆるゆるトークで、ライブのコンセプトや、ツアーグッズにこの先の伏線が張られていることなどが明かされた。その後“ゆーれいずみー”のトラックとともに死に装束をモチーフにした衣装に身を包んだReolが登場。幽霊をアイコンにしたキャッチーなポップソングを入り口に、読経のような導入で仏教音楽の成分を取り入れた“カルト”へ。Reolの持ち味のひとつである、新しい解釈の和テイストのサウンドをディープに味わえるセクションだ。

情感たっぷりに切実な気持ちを歌い上げる“幽居のワルツ”から間髪入れずに次々と楽曲が畳み掛けられる。隙の無い演出とステージパフォーマンス、大胆不敵にメロディを乗りこなすReolの歌唱力とリズム感に感心しきりだ。“十中八九”では果敢に観客を巻き込み、クラブDJのようにフロアを揺らす。インストを挟み衣装チェンジをして登場した直後の“極彩色”は決意を綴った歌詞を噛みしめるように毅然とした態度で声を響かせ、“真空オールドローズ”での降り注ぐバラの花びらが彼女の足元を真っ赤に染める演出は、美しく見える一方絶望も思わせる。「終息」や「死」をモチーフにしたディープセクションの終幕として非常にシンボリックな一幕だった。

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シロクマとウサギがステージでMCを繰り広げたあと、鮮やかな黄色い衣装のReolがステージに戻り、「自分は天下無敵である、という人生謳歌の曲」と語った新曲“HYPE MODE”を披露した。ここからラストまで観客へとシンガロングを多く求め、彼女の歌も楽曲の世界観を作り出すという意味合い以上に、フロアに集まる観客へと向けられていた。“たい”はまさに狂乱という言葉がぴったりのトランス空間。Reolもパワフルにジャンプしたりと全身でその熱を伝え、その気魄に溢れた姿はこの日のどんな演出よりも目を見張るものがあった。キラーチューン“劣等上等”からラストの“サイサキ”へなだれ込むと、Reolは巨大フラッグを持って歌唱。曲が終わり暗転すると、風に吹かれるフラッグだけがステージに残されている。本編最後まで抜かりない粋な計らいだ。

Reol/新木場STUDIO COAST
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アンコールでは「Reolの文明をもっと大きくしていきたい。チームReolはもっとアップデートしていく」とこの先の展望を語る。ラストの“宵々古今”は、晴れやかな表情で「みんなと一緒に歳を取っていきたい」と語る彼女の想いに応えるように、フロアが全身でこの場にいられる喜びを表現していた。終演後には来年1月に2ndフルアルバムをリリースし、全国ツアーを回ることを発表。圧巻のトランジットを繰り広げた彼女は、いったい次にどんな空間を創成するのだろうか? 本当の文明開化と侵攻はここからかもしれない。(沖さやこ)

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