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眉村ちあきは天才である。なのに、登場からそこそこの年月が経つ現在も「カルトスター」のままで「大スター」にはなっていない。天才が必ずしも大スターになるとは限らないが、ただ、彼女の場合は理由があきらかで、その才能をコントロールしてうまく使おうという考えが本人に皆無だし(だから天才だ、とも言えるんだけど)、周囲にそういうディレクションをできる人もいなかったからだ。四方八方に向けて波動拳を乱射していて、「それ一方向にしていっぺんにドーンと出せばいいのに」みたいな状態だったわけである。しかし、本作に収録されているのは、本人曰く「初めてテーマを決めて作品を作りました」という“朗読”“季節風”“濾過”の3曲。しかもそのテーマは「恋」。トオミヨウと本人の共同編曲の“朗読”がいちばんすごい、と言いたいところだが、いつもの兼松衆とアレンジした“季節風”も、ひとりで作った“濾過”も、恐ろしくいい。ヤバい。売れちゃう。この才能が世間に気づかれる、今度こそ。(兵庫慎司)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年6月号より抜粋)
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