えも言われぬ心模様にフォーカスし、それをストップモーション映像のように拡大抽出する瑞々しいポップソングの数々。2019年に福岡で結成された4人組バンドのDeep Sea Diving Clubは、絶え間ない時の流れに押し流されそうな感情の瞬間を拾い上げる。本作は彼らのメジャーデビューEPで、冒頭に配置された“bubbles”の、息を止めて深くダイブする恋物語にも明らかなように、そのバンド名に宿した強靭な表現方針をズバリ提示してみせた作品である。ソウルやラテンミュージック、エレクトロファンク、果てはポストヒップホップ/ベースミュージック時代の人力グルーヴまでが落とし込まれたサウンドを緻密に編み上げているのだが、そんな音楽的情報量さえ凌ぐほどストーリーテリングが雄弁で、華麗にキャッチーに着地してみせる。昨今の盛り上がりの中でジャンル名ばかりが上滑りするシティポップは、本来その音楽の豊かさで我々の心模様の豊かさを映し出すものだ。世代を越えたコラボのシングル曲“Left Alone feat. 土岐麻子”にも、優れたポップの本質を継承する心意気が見て取れる。(小池宏和)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年6月号より抜粋)
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Deep Sea Diving Club『Mix Wave』
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