アルバム『But wait. Cats?』を引っ提げた全国ホールツアー・東名阪アリーナツアーの締め括りとなった、2022年12月8日のファイナル公演を収録した映像作品。ガイドライン改定を受け、オーディエンスの声出しが条件つきで可能に。シンガロングが広がる様子に、（かなり以前だけど）同じ国立代々木競技場第一体育館で観たオアシスを思い出した。アリーナという規模もなんのその、鍛錬を感じさせる鋭いビートと伸びやかなメロディを轟かせ、川上洋平が身振り手振りやMCも含めていざなうと、どんどんオーディエンスの心身が解き放たれていく。ジェントルでスタイリッシュで、それでいて誰よりも奔放な少年の顔を持つロックスター4人衆だからこそ見せることができた、「こうしてライブはコロナ禍から復活していくんだ」と噛みしめられる光景。たくさん映し出されたオーディエンス――《君》の表情、泣き顔、笑い顔、歌う顔からも、鬱屈した今こそロックは必要だ、そう思わずにはいられなくなった。セットリストも、バンドと時代の物語を重ね合わせて観ると、たまらない感慨が込み上げてくる。（高橋美穂）

（『ROCKIN'ON JAPAN』2023年6月号より抜粋）

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