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どこかのハリウッド映画の宣伝文句みたいな見出しだが、なかなか音楽業界では耳にしない現象が起きるのがアジカンだ。前作収録の10曲は再録され、新曲5曲を追加した全15曲。今作で江ノ電の全15駅を完全制覇した。潮騒のようなギターストロークで始まる“柳小路パラレルユニバース”、《転がる岩ならどこまでも行ける》と軽やかにロックを鼓舞する“石上ヒルズ”などの新曲群を聴き進めると、15年前の当時すでに、『完全版』も完成していたのでは?と感じてしまうほどに『サーフ ブンガク カマクラ』である。全曲通してパワーポップを貫き、青春の大団円を迎えたような解放感が喉元を過ぎていく。前作の発売当時、『ワールド ワールド ワールド』や『未だ見ぬ明日に』といった濃密でエモーショナルな作品が並ぶ中、ある種ロックのフィジカルを取り戻す役割を担ったであろう『サーフ ブンガク カマクラ』――その『完全版』である今作も、数年の間フィジカルが失われた現代へのメッセージとして高らかに響く。(橋本創)(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年8月号より抜粋)
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