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12月25日、まさにクリスマス当日にサプライズリリースされたこの楽曲で、Eveは、享楽的でありながらも切なく、彼らしい上品さが宿ったディスコサウンドに乗せて、こう歌っている――《風邪は治んねえ/金は貯まんねえ/死んだようなもん》。聖なる夜であっても相変わらず、Eveは、人生を扱いづらいものだと思っている人の味方である、ということだ。着飾った街を行く人が吐き出す白い息に混じる、痛みや悲しみを彼は見逃さない。サウンドは甘く躍動しているが、歌詞だけを見れば、それはほとんど、うらぶれた男のやけっぱちな独り言である。ただ、「俺の人生、詰んでんじゃねえ?」という諦念の奥底から、Eveは一縷の望みを引きずり出す。《その目はなんだ まだ終わっちゃいない未来》――そう歌う、この希望の根拠が歌の中で説明されることはないが、それでいい。生きる、なんてそういうことだ。大した根拠なんてなくても、希望を持つことくらいしか、やることなんてないだろ。さぁ、逃げろ逃げろ。未来に逃げろ。(天野史彬)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年2月号より抜粋)
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