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ささやかな愛を歌ったり、社会に対する憂いを描いたり、ファンタジーな世界観を構築したり、ロックバンドには各々のスタイルがあるが、そのすべてをふたりのコンポーザーの手で完成度高く音にするのがトンボコープ。特に驚いたのは、雪村りん(G・Vo)作の“明日の一面”と林龍之介(Dr)作の“PARADIGM”。 “明日の一面”は、SNSに飛び交う辛辣な言葉たちに警鐘を鳴らすようなノイジーなサウンドと挑戦的な歌詞で、“Now is the best!!!”に代表されるチャーミングなイメージを塗り替えていく。アクセントとなる1曲をアルバムに入れ込むのは珍しいことではないが、“PARADIGM”もまた、“明日の一面”とは別角度で社会の矛盾を炙り出すような鋭さを持ち、異彩を放つ。一方で《君の喜と怒と哀楽あれもこれも/隣で一緒に過ごしたい》と歌う“喜怒哀楽”は、感情をストレートにぶつけるのではなく、相手と気持ちを共有することの尊さを描くことで、愛の伝え方により一層深みが出ているのがすごい。決して型にはまらず、今伝えたいことを変幻自在に表現する彼らの底力を見せつけられた。(有本早季)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年5月号より抜粋)
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