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本人の意向だけでなくスタッフの提案も受けながら選曲したという影響もあってか、最初の4曲で打ち込みのダンスナンバーを連打したあと、バンドサウンド主体に移りつつポップ~フォーク~ロックと様々な曲調が披露されることで、「こういうYUKIが聴きたい」という聴き手の多様な願望が漏れなく叶えられる作品となっている。タイトルであるスカートのスリットの意味でもある「傷」を本作のテーマにしたという通り、《まぶた腫れて 映えていなくても 此処にいる》(“Now Here”)、《止まらない坂道 転げて/傷だらけでも 抱きあうの》(“追いかけたいの”)など間接的/直接的を問わず傷を抱えた精神を包み込むようなリリックが随所で綴られている。そして、本作のクライマックスを刻む“こぼれてしまうよ”の《好きなんだよ 好きなものを好きと言って 何も悪くないんだよ/そんなこと あたりまえの世界にしたいなあ》という究極のメッセージへと収斂するのだ。YUKIというミューズの慈愛が結晶した傑作。このアルバムが好きだ。(長瀬昇)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年8月号より抜粋)
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