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1stミニアルバムの1曲目“開拓者”、その「2024 mined ver.」を聴いて日食なつこの「変わらなさ」に胸打たれた。もちろん音の手触りは違うのだが、10数年前CDプレーヤーの前でこの曲と対峙した時から、その実直な歌の佇まいはまったく変わっていない。アーティストにはキャリアを重ねるごとに表現の羽を伸ばすタイプもいるが、日食なつこは活動初期から既に完成していて、この15年間、己の核心と世の真理を仏師のように彫り進め、磨き続けてきた表現者なのだ。他者との分かり合えなさ、社会との折り合いのつかなさの先でこそ光り輝く「個」の強さ、そして出会いのかけがえなさをいぶし銀の言葉と極彩色のピアノで歌い貫いてきた彼女が、ベスト盤唯一の新曲にして終曲“0821_a”に刻んだのは《出会えた者たちよ 出遭えなかった存在よ/またいつか なんてない さよならだ》という決然とした意志。さよならだけの人生で、日食なつこに出会えた、これから出会うべきあなたの人生の指針となる、太く逞しい柱のような音楽である。(畑雄介)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年11月号より)
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