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映画『恋に至る病』への書き下ろしでも、しっかりとSaucy Dogはかましてくれた。ポップかつカオティックなサウンドは、クラスの人気者でありながら殺人犯である景(『恋に至る病』のヒロイン)、そして単なる純愛に収まらないストーリーを彷彿とさせるよう。言葉のリズムや音程を活かす手腕も鮮やかで、サビの《奇跡を待ってたって自由にはなれなくて》なんて、まさに耳に残るキラーフレーズだ。もちろん、歌詞にも妥協はなく《羽根が生えただけの塊》には思わず鳥肌が立った。生き物じゃない何か=化物とほのめかすと共に、直前に《行きすぎた思いはさなぎになって》と記すことで、劇中のキーワードとなる蝶を想起。しかも、この一節の直後に、ギター1本からバンドへと演奏が移り変わるのだ。まるで煮詰まった愛が狂気に変わってしまったと告げているような展開ではないか。大切な人に幸せであってほしいという祈りと愛の名の下に罪すらも背負っていく覚悟が、音楽のすべてを通して鮮明に描き出されている。(坂井彩花)(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年12月号より)
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