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ウィルコ『ウィルコ(ジ・アルバム)』
ウィルコ ウィルコ(ジ・アルバム)
昨年、ウィルコの演奏にフリート・フォクシーズのメンバーがコーラス参加した“アイ・シャル・ビー・リリースト”のライブ映像を観て、まるで『ラスト・ワルツ』の一幕ではないかと思った。ジェフの昂ったファルセット・ボイスに、目眩がした。ウィルコは今、そういう地平に立ってこの世界のことを歌っている。遠慮がちに、相変わらず毒づきながら、それでもオルタナティブという名のポーズに成り下がってしまうような安っぽいカウンター意識は投げうって、アメリカン・ロックのど真ん中を歌っている。自分以外の世界はすべて狂っていると思いながらソリティアに興じている人々に、カモンと声をかけるのである。前作で最小限の協力に留まっていたジム・オルークの名は、今作で遂にクレジット欄に見られなくなった。バンド・サウンドは少々の(そして最大限効果的な)エフェクトを噛ませてはあるが極めてオーガニックであり、あらゆる音の端々からメンバーの息づかいが聴こえてくるようだ。そして最高の演奏が最高のメロディで最高の歌を運んでくる。ここに来てのセルフ・タイトル作は伊達じゃない。本編最終トラックの“エヴァーラスティング・エヴリシング”を聴けば、本作がウィルコの『ラスト・ワルツ』になりはしないだろうかというぐらい、極まっている。この地に足の着いたアメリカン・ロックが、ウィルコの先鋭性を説明するには物足りないという向きもあるだろう。正直、どうせこれを聴くなら何よりライブで聴きたい、という気持ちはある。でもこれは、世界中の欺瞞と嘘と気休めに追いやられた人々に届くべき、ロックだ。(小池宏和)
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