レゲエより出てレゲエに非ず

マティスヤフ『『閃光のスペクトラル』
2009年08月12日発売
ALBUM
マティスヤフ 『閃光のスペクトラル
“スマッシュ・ライズ”、“ウィ・ウィル・ウォーク”の冒頭2曲で「呪術としてのレゲエ」「高揚感のフェーン現象としてのレゲエ」を同時再生的に提示するクールな手腕。シングル曲“ワン・デイ”で展開する、細波のように寄せては返す幽玄かつ壮大な風景。“ソー・ハイ・ソー・ロウ”のバンド・グルーヴと描き出す怒濤のダイナミクス。ファンファーレとレゲエとマシン・ビートとを1つのタペストリーに編み上げた“フォー・ユー”の聖なる高揚感……そもそもユダヤの伝承とレゲエの高気圧的熱量とを量子レベルで融合させたのが、マティスヤフことマシュー・ミラーが前作『ユース』で確立した表現方法だったわけだが、今作はさらに踏み込んで、あたかもポップ・ミュージックの森羅万象を宇宙から俯瞰するかのように自由で制御不能な音像を構築してしまっている。ヒップホップを切り裂くように鋭利に響くライム。ロックを置き去りにする勢いで加速する性急なビート。笑顔と闘志がフェーダーMAXまで上がりまくった切迫感でもって鳴らす、ふくよかで無駄のないアンサンブル……すべてが恐ろしいほど高性能に研ぎ澄まされた名盤。(高橋智樹)
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