アカデミックでもダサくない

タイヨンダイ・ブラクストン『セントラル・マーケット』
2009年09月02日発売
ALBUM
タイヨンダイ・ブラクストン セントラル・マーケット
ソロ前作は、聴く人によっては結構ハードなエクスペリメンタル・ノイズがしばし展開した後、やがて不思議な穏やかさを感じさせる世界が広がっていく、そんな内容だった。あれから実に7年ぶりとなる本作では、なんとクラシック音楽へとアプローチ。ジョニー・グリーンウッドとのプロジェクトでも知られるニューヨークのアンサンブル=ワードレス・ミュージック・オーケストラが3曲に参加し、ストリングスやホーンをはじめ様々な楽器がフィーチャーされている。ちなみに、制作に取り組むにあたって最も参考にしたのはストラヴィンスキーの交響詩“ナイチンゲールの歌”だそうだ。

もちろん、単に鷹揚なオーケストラ・アレンジになっているわけはなく、どこまで生演奏のままなのか分からないほどデジタルなプロセスが施されているし、ポップな躍動感も十分に備えたサウンドだ。聴き始めは坂本龍一の諸作を連想したりもしたが、口笛を筆頭に、バトルスで発揮されてきたタイヨンダイの感性は全編から感じられるし、他のどこにもない作品になっていることは間違いない。聴き込むたびに新発見がありそうでワクワクする。(鈴木喜之)
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