それはもはや神話の如く

鬼束ちひろ『DOROTHY』
2009年10月28日発売
ALBUM
鬼束ちひろ DOROTHY
“陽炎”“X”“I Pass By”“帰り路をなくして”“ラストメロディー”“蛍”と、すでに全11曲中6曲のカードが明かされていたとはいえ、約2年ぶり・移籍後2作目のアルバムでそれらの楽曲が編み上げるストーリーは、楽曲単体よりもはるかに悲壮で、凛として、しなやかで、それでいて強い。“X”“ストーリーテラー”“STEAL THIS HEART”“I Pass By”と続く「ロック・サイド・オブ・鬼束」とでも言うべきパートでワイルド・フラワーのように咲き乱れる艶やかな歌も十二分に魅力的だ。が、“帰り路~”“Losing a distance”“ラストメロディー”“蛍”というメロディアスな流れは、欲望と諦念と疑惑がコングロマリット化したこの世界の混沌をリセットするほどの、それこそ神話レベルに聴く者を戦慄させる束縛力を持ってしまっている。そして、壮麗に燃え上がるストリングスの響きよりもさらに激しく美しく《傷口が開いたなら/塞がるまで走ればいい/どこへでも繋がる道を/繋がる日々を/繋がる光を》と宣誓してみせる7分超のラスト・ナンバー“VENUS”には、もはやただ圧倒されるしかない。(高橋智樹)
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