“本番”はまだまだこれから
ゴシップ『ミュージック・フォー・メン』
2010年01月06日発売
2010年01月06日発売
ALBUM
“スタンディング・イン~”のヒットを契機に、3作目にしてブレイクを遂げた前作から3年。古巣キル・ロック・スターズを離れてメジャーへ移籍し、おまけにベスのプチセレブな露出も手伝い、今やすっかり人気者となったゴシップ。だが、肝心要のところは何ひとつ変わっちゃいない。ニュー・レイヴも追い風に、前作で好感触を得たダンス・ビートの導入は、今作でも引き続き随所に実践されている。12インチも切られたピアノ・ディスコM4からトライバルなM5への流れは、とりわけ今作髄一のパンチラインだろう。しかし、それ以上に耳を惹くのが、2枚組アナログのA面にあたる冒頭3曲の流れ。ファットなブルースから十八番のディスコ・パンク、そしてソリッドなガレージ・ロックへと荒々しくスウィングする展開は、バンド初期の姿を彷彿させる彼らの真骨頂か。そもそもゴシップは、そのエタ・ジェイムズとライオット・ガールズが共闘したようなダイナミズムこそ最大の魅力だった。それはビキニ・キルやスリーター・キニーらシーンの先達にも望むべくもない、唯一無比の個性だ。本作には、そんな彼女ら本来の姿も存分に刻み込まれている。素晴らしい。(天井潤之介)