冒頭、諦めと絶望を帯びて中田が歌う《人の波が交わる 巨大な交差点で/めまいのような無力さを ただ感じた》という喪失感は徐々に体温を得て、やがてストリングスの流麗なメロディと、シンプルなギターアンサンブルが紡ぐ優しい調べにのせて、絶望の向こう側の《血の通うこの身のありか》を求めてのびやかに歌い上げる。
今回のタイアップは、ドラマのテーマでもある「生きる」ということと、彼らの楽曲に滲み出る、生温かい人のぬくもりがリンクして実現したのだと思うが、ドラマの世界観に寄り添いながら彼らが描いた歌世界は、驚くほど開かれ、美しくしなやかな強さを持つ。それは椿屋四重奏が、「人」の描きかたを新たにひとつ手に入れ、進化を遂げたことを証明している。これからが楽しみだ。(中村萌)