くるりと映画の関係で思い出されるのは『ジョゼと虎と魚たち』、或いは岸田が出演した『色即ぜねれいしょん』などだが、今回の三浦しをん原作・大森立嗣監督による『まほろ駅前多田便利軒』のサウンドトラックは、岸田繁名義の作品になった。体裁としては実に真っ当な映画スコアを書き下ろしているのだが、踏み込んでみると今の彼にとってのさまざまな音楽表現の興味が立体的に像を結ぶ仕掛けになっていて唸らされる。
ブラスとストリングスを中心にしたトラックは、大仰なシンフォニーというよりもキャッチーで味わい深いトラッドのエッセンスをミックスしてゆくもので、つまりそれはワルツでありフォークでありR&Bである。自ら課した禁じ手を解き放って現代生活に馴染むニュー・ルーツ・ポップを生み出してきた最近のくるりのモードとも、それは地続きだ。くるりとして録音したテーマ曲2曲はボーナス扱いとして盤の最後に収められているが、その2曲をひとりオーバーダブによってハード・バップよろしく変奏してゆくスコアも面白い。音楽家として楽しめた仕事ぶりが伝わる。(小池宏和)